【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第4章 3Fr!『止められないimpulse』
「ん、上出来!・・・ほら、ご褒美。」
額に落ちた熱はジンジンと甘い感触を残したままで。頭をポンポンと優しく撫でながらキッチンへと立ち上がっていく夏樹。
真琴は放心状態のまま、その後ろ姿をぼんやりと見つめていた。
唇に残る熱の余韻、体には甘い疼きが今もありありと残っていて、そのことは先程までのことが全て現実であることを示しているわけで。
ずっと、ずっと、触れてみたかった熱は、熱く、甘く、真琴を溶かしていって
さらに貪欲にそれを求めたくなるような、一度味わったら最後、頭の中を、心を支配されていく。
そんな感覚だった。
そっと自分の唇に触れて、そこに今まで触れていた熱を愛しく思った。
「…………………夏兄………」
見えなくなった背中に呟く。
呼べばいつもの笑顔でまた彼が戻ってくるのでは?と淡い期待を抱いてしまう。
____しかし、現実はそう甘くはないもので、大好きな夏樹は現れない。
真琴は起き上がると、そっと自分の体を抱き締めた。
夏樹の感触を思い出すかのように。
キッチンでは遙がいつものように鯖を焼いていた。
律儀にエプロンを纏って調理している姿に、夏樹はくすりと笑いを溢す。
気づかれないよう静かに歩みを進めると、背を向けたままの遙が口を開いた。
「…………夏兄…?」
ちらりと後ろに視線を向ける遙に、夏樹は小さくため息を漏らす。
「くっそー!……バレたか。音立ててないつもりだったのにどんだけ耳いいんだよお前。」
遙の背後に立つ夏樹の指が、遙の耳を縁取るようになぞった。
「___うぁっ///!?」
直後、ビクリと跳ねる遙の体。
遙の反応に思わず笑みを浮かべた夏樹は、そのまま耳元へ唇を寄せ、ふぅと息を吹き掛ける。
すぐに聞こえてくる甘い声。
「んっ…///!」
「………可愛い声出して………どうしたの?………遙。」