【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第3章 2Fr!『慈しみのdistance』
しばらくの間抱き合っていた夏樹達だったが、その均衡を破ったのは渚の声だった。
「なっちゃんっ!!!会いたかったんだよぉ!!!もう、ずっとずっと…本当にいっぱい…」
言いながら大きな瞳に再び涙を浮かべる渚の頭を夏樹はその大きな手でそっと撫でた。
撫でられると途端に安心させられるその手を渚は大好きで。
やっと触れてもらえたことが嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「うん…俺も、渚と、遙と、真琴に逢いたかったよ。…ずっとね?」
ふわりと笑う夏樹に、三人は見惚れてしまって、次に会ったら言いたいこと、聞きたいことがたくさんあったはずなのに、次の言葉が見当たらなくて。
「…夏兄……あれ…。」
気がつくと遙の口からは聞きたいこととは全く違う音が零れて。
意味がわからず不思議そうな顔をしている二人とは、正反対に夏樹は柔らかな笑顔のまま頷いた。
そして遙に腕を伸ばすとその後頭部をそっと自分の方へと寄せ、額にキスを落とした。
それは以前の僕達がいつも夏樹にしてもらっていた挨拶であり、おまじない。
離れる熱。
残っている甘い感覚に遙の胸は締め付けられ、目の前の男への愛しさがあふれ出してしまう。
「_____っ…夏兄っ!!」
再び強く抱きついてくる遙の頭撫でながら、固まったように夏樹を見つめる二人に笑顔を向けた。
「おいで?……渚?…真琴?」
弾けたように飛びつけばしっかりと受け止めてくれる逞しい身体。
渚、そして真琴の額へとキスを落とすと、二人は満面の笑みを見せ、大好きな夏樹との再会を喜んだ。
「なっちゃん~~~~っ!!大好きぃ~~~~!!うわぁ~ん!!!」
「うんうん。俺も大好きだよ。お前、本当可愛いな、渚。」
「夏兄っ夏兄っ本当に夏兄だぁ!夢じゃないんだぁ!」
「ははっ真琴っほら、温かいだろ?これが本物の証だろ。…にしてでかくなったな真琴~」
自分とほとんど同じ目線にいる真琴の額に自分の額をくっつけ、夏兄は楽しそうに笑う。