Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
「あたしね、凛くんが誰かから聞いた通り、凛くんと出会う前...中1の冬の終わりから中学卒業くらいまでかな、いろんな人と付き合ってた」
具体的な人数をあげれば過去に9人の男子との交際経験があった。
凛の顔を見ることなく汐は続ける。
「今だから言えることなんだけどね、付き合ってはいたけど、いまいち好きって気持ちがわからなくて、恋愛感情はなかった。...からっぽな付き合いだったと思う」
汐の過去を知る人は口をそろえていう。からっぽな恋愛だったと。
しかし当時の汐はそれさえもわかっていなかった。
「前、凛くんに話したと思うけど、海子の話覚えてる?」
「ああ」
プールに落ちた汐を助けた翌日、体調を崩した汐の元へお見舞いに行った際に聞いた話だ。
プールが怖い理由。みーこという本名とは全く関係ないあだ名の由来。
あの話で、海子という今は亡き親友の存在が汐の中でいかに大きいか凛は知った。
どうやら汐の過去と海子の死は関係があるようだ。
「あたしがそんな恋愛を繰り返してたのは、海子がいなくなってから、中学卒業くらいまでなの。...海子がいなくなって出来た心の穴を他の人で埋めようとしてたんだろうね」
そう自嘲気味に言った。
昔の自分のあやまちをすべて海子のせいにしている。
所詮は全て自分のエゴイズムだったと汐は今になって思う。
「今はもうやってないんだけど、あの時SNSが流行っててね、簡単に人とつながれた。それで、仲良くなって、告白されて、...断れなかったの」
汐の瞳が陰る。昔は断れない性格だった。
SNSを辞めた理由はどこを歩いていても顔と名前が一致しない人に〝汐ちゃん!〟と声をかけられることが多くなったからだった。
さらに、ふとした瞬間に〝ひとり〟を感じるようになった。
SNSは常に誰かとつながっていないと不安にさせた。
それに気づいた時、画面の中でのつながりはひどく空虚なものに思えた。
人とのつながりを求めたのに、つながりすぎて怖くなってしまったのだ。