Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
「え...それはどういうことですか...?」
似鳥の困惑した表情に胸が痛む。
汐は自嘲気味に微笑みながら言葉を発した。
「なんだろ、凛くんが好きだから、本当のことを言えなかったっていうのかな。その結果凛くんを傷つけて...」
汐の本心だった。言葉にすると泣きたくなった。
「結局は自分が可愛かっただけなのかなって。...凛くんに嫌われたかもしれな...」
「それは絶対ないです!!」
汐の言葉を遮って似鳥が声を大にして断言した。
思わず汐は似鳥を見た。
似鳥の瞳はまっすぐだった。
目は口ほどにものを云う。
これはフォローなんかじゃないぞと。
「凛先輩は本当に汐さんのことが大好きなんです!ここ3,4ヶ月ずっと携帯電話を見て幸せそうにしてます。たぶん汐さんと会ったであろう日の凛先輩はいつも嬉しそうでした。凛先輩から汐さんと付き合っていると聞かされたのは本当に最近ですが、僕はそれをずっと見てました!」
一生懸命に似鳥は汐に訴える。
「それに、もし、本当に嫌いになったらあんなにつらそうにはしないと思います...。僕は、凛先輩は汐さんのことが好きでこれからも一緒にいたいからこそあんなにも悩んでいるものだと思っています...」
似鳥にしかわからないこと。それは汐が知らない寮での凛の姿だった。
「だから、本当のことを凛先輩に教えてあげてください。凛先輩と汐さんならきっと大丈夫です...っ!僕、おふたりのこと応援してます...っ!」
(ああ、みんな応援してくれてるんだ...)
璃保も同じようなことを言っていた。夏貴も口には出さなかったがふたりを心配していた。
「ありがとう、似鳥くん。あたしも凛くんが好きでずっと一緒にいたいから本当のこと話すね」
晴れやかな笑顔だった。
その笑顔を見て似鳥は、凛がどうして汐のことが好きなのか、その一部を理解できたような気がした。
同じ頃、凛は俯きながらひとり通路を歩いていた。
ふと顔を上げるとひとりの女子が腕を組み壁にもたれながら立っていた。
青みを帯びた黒髪のショートヘアーとロイヤルブルーの瞳が美しい長身美女。
会うのは久しぶり、しかし凛は全く久しいとは思わなかった。
「朝比奈...」
「凛、アンタちょっと顔貸しなさい」
話があるわ、と璃保は凛を見据える。
この冷たい視線、凛は既視感を覚えた。