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Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love


元気なさそう、その言葉に凛は眉を寄せた。

彼らの話を聞いていると、ふとした瞬間に見せる表情が思いつめたような雰囲気を帯びているらしい。
見ていてなんだか可哀想になってくるらしい。
汐も気にしている。なんともないわけではなかった。
ならば尚更このままではいけない。

凛は席を立った。
少し、頭を冷やそうと思った。




汐は自動販売機から、買った飲み物を取り出した。
そしてため息をついた。合同練習は折り返し地点だが、まだ凛とはひとことも話していなかった。
凛は自分の話に聴く耳を持ってくれるだろうか。
内容が内容なだけに、信じたい反面不安も大きい。

紙パックにストローをさした。
ストローに口をつけようとしたとき、後ろから声をかけられた。

「榊宮、汐...先輩」
「あなたは...」
汐は声をかけてきた彼を見つめた。
どこか弟を思わせる雰囲気があった。
背は汐の弟の夏貴よりも少し低いくらいか。
切りそろえられた銀髪に泣きボクロが印象的な可愛らしい少年だった。

「1年の、似鳥...愛一郎です...っ!」
似鳥愛一郎。この名前には聞き覚えがあった。
緊張のせいか肩が上がっている似鳥に、汐は柔らかな微笑みを見せる。

「...松岡くんのルームメイトだっけ?どうしたの?」
あえて凛のことを苗字で呼んだ。用件はなんだろうか。
似鳥という名前はよく凛の口から聞く。
だから汐は一方的に似鳥のことを知っていた。
似鳥とはこれがファーストコンタクトだが、自分の想像していた似鳥のイメージと本人がだいたい同じで微笑ましい気持ちになる。


「その...っ!し...榊宮先輩、凛先輩となにかあったんですか?」
汐はもう一度似鳥を見た。澄んだ水色の瞳と一瞬だけ陰がさした赤紫の瞳がぶつかる。

「あー汐でいいよ。それに先輩もいらないかな。...凛くんからなにか聞いたの?」
「いえなにも...。凛先輩に訊いても、別に、とだけで。でも最近寮でも元気ないことは一目瞭然なんです...。失礼を承知で、もしかしたら彼女さんとなにかあったのかなって思って...」
自分たちのすれ違いが、関係ない周囲の人にまで心配をかけていると汐は思い知った。
途端に申し訳なくなる。

「似鳥くん、あたしが悪いの。ごめんね...」
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