• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love


汐は無言で頷いて肯定した。
唇を噛みしめる。そうしないと涙があふれてこぼれてしまいそうだった。
璃保は本当に自分以上に自分を理解してくてる人だと思った。

「そうだね。ほんとにそうだね」
「だから凛に本当のことを全部話しなさい。ね、大丈夫よ、凛なら受け止めてくれるわ」
璃保は優しく汐を抱きしめた。
思えば昔からこうだった。汐が悩むと親身になって話を聞いて諭してくれた。
汐は璃保の腕の中で凛に本当のこと話す決心をした。





同じころ、鮫柄水泳部は練習を終えて各々更衣室で着替えをしていた。
練習後、部員は足早に部室を後にして人も疎らになっていた。
季節は11月。寒い更衣室よりも暖かい寮のほうが居心地が良いのも当たり前だ。


「似鳥ー、ちょっといいか?」
「御子柴部長、お疲れ様です」
似鳥が荷物をまとめて帰寮しようとしていたところ、御子柴が声をかけた。
周囲の様子を軽く確認すると神妙な面持ちでこう切り出してきた。

「似鳥、松岡から何か聞いてるか?」
「え?」
話によると、今日の凛は様子がおかしくなにかに囚われているように見えたらしい。
だがそれは練習の合間にふと見せる表情であって、練習そのものに影響はなかった。
ただ、地方大会以来ずっとそのような様子がなかったから部長として気がかりだと御子柴は話す。

「...確かに、言われてみれば昨日の夜から凛先輩の様子がおかしかったような...」
「そうか。...、松岡のやつがお前になにか話してきたら聴いてやってくれ」
「はい」
そういって御子柴は去っていった。


似鳥は寮の廊下を歩きながら考え事をしていた。


(凛先輩、どうしたんだろう)

昨日の凛の一連の行動を可能な限り思い出す。
確か、昨日凛は汐と会っていたような気がした。それに夜電話をしていたような気もする。
偶然かもしれないが、明日は汐のいるスピラノ水泳部との合同練習だ。
確かに地方大会以来凛のあのような表情を見るのは初めてだった。
なにか力になりたいと似鳥は思う。

似鳥は寮の自室の扉を開けた。
そこには一足先に戻っていた凛がいた。
御子柴の言う通り、思いつめた表情をしている。

似鳥は息をのんだ。控えめな喉仏が上下する。

「凛先輩...っ!」

話すことで少しでも気が楽になるのならそうしてほしい。



そして、さまざまな想いが渦巻く合同練習が始まった。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp