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Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love



「どうしよう...」
汐は携帯電話を握り締めながら唇を噛んだ。

出来れば言わないでおきたかったことを、凛は知ってしまった。
焦りすぎて言いたいことが全く言えなかった。
いや、あの状態で電話していても言い訳が空回りして余計事態が深刻になっていただけだったかもしれない。


凛に嫌われたかもしれない

そのことを考えるとまともな思考回路ではいられない。
胸がどくどくと苦しい。寒いはずなのに汗が出てくる。

「どうしよう...!」
このままではいけない。
もう言い逃れはできない。凛に本当のことをすべて話さなくてはならない時が来た。
しかし凛は聴いてくれるだろうか。
凛なら受け止めてくれると信じたい反面、拒絶されるかもしれない恐怖が胸を支配する。


動転する気を落ち着かせようと床に座り込む。
その時、部屋の扉をノックする音が耳に届いた。
「姉さん、入るよ」
「夏貴...」
「姉さん?どうしたの....?」
扉の隙間から夏貴が顔を出す。
そして振り向いた汐の顔を見るなり夏貴は駆け寄ってきた。
夏貴の顔を見た瞬間、汐は泣きそうになってしまった。



「...はい、姉さん」
リビングのソファに座る汐の前に夏貴はホットミルクを置いて隣に腰をおろした。

「ありがと...」
夏貴の気遣いが嬉しかったが今は飲む気になれなかった。

「凛さん、どっかで聞いちゃったんだね」
昔の姉さん、と夏貴はすっと目を細めた。
夏貴は過去の汐のことをすべて知っていた。

「うん...」
「僕なら姉さんにそんな顔させないのに...」
震える汐の手に夏貴は自分の手を重ねた。

「姉さんになにかしてあげたいけどこればっかりはどうにもできないよ。ごめんね。璃保さんに相談して。僕、明日姉さんの好きなもの作って帰り待ってるから元気出して」
弟から姉へ、とは思えない優しい声だった。

「ありがと夏貴...明日璃保に相談する...」
その言葉に夏貴は眉を下げるとやわらかく微笑んで、俯いた汐の頭に軽く手を置いて髪に唇を寄せた。

「うん。ねえ、これ、ホットミルク、甘くしたんだ。姉さん甘い方が好きでしょ?これ飲んで今夜はゆっくり寝て」
汐は夏貴の作ってくれたホットミルクに唇をつけた。
やわらかな甘味が口に広がる。心がすっと落ち着いていく。
ホットミルクの甘さがじんわりと染み渡るように、夏貴の優しさが胸に広がった。
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