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Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love


「なあ、汐。過去の恋愛遍歴が派手って本当か...?」
『え...』

戸惑う汐の声。

出来れば、違うと否定してほしかった。
元カレはいるけどそんなに派手じゃないよと言ってほしかった。
もしくは素直に認めてほしかった。

しかし、電話越しに紡がれる汐のことばは凛が望んだものとはかけ離れていた。

『誰から聞いたの?』

妙に肝の据わった声のように感じた。
その声で汐の別の顔を見たような気分になる。
ああ、そうか。と凛は思ってしまった。

「否定しねえってことは、そうなんだな」
『違うよ』
たったひとこと、いうタイミングが遅いだけでこうも違うのか。

鼓動が大きくはねた。
せりあがってくる感情は何だ。

「じゃあどうなんだよ」
『それは、...』
心臓がどくどくと煩い。
この溢れそうな感情は何だ。

「言えねえことなのか?」
『...ちがっ!』
明らかに汐はこれまでにないほど動揺している。
素直に認めたら割り切るつもりだった。
しかし汐は否定こそしたが訂正はしない。
本当のことを言おうとしない、隠そうとする。
それは凛にとって不信感を増幅させるに過ぎない。

『昔の人は好きじゃなかったの...っ!』

「は、なんだよそれ」
せりあがり、あふれ、一番最初にこぼれた感情は、怒り。
汐の口から信じられない言葉が出てきた。

「遊びだったってことかよ」
『凛くんは違うの!』
電話越しに聞こえるのは、汐の必死な声。

〝昔の人は好きじゃなかった〟
ではどうして好きじゃない元カレが何人もいるのだろうか。
それはつまり遊んでいたということだろうか。
男を掌の上で転がして弄んでいたのだろうか。
少なくとも今の凛にはそうとしか思えない。

「悪かったな、急に変なこと言って」
『待って凛くん!凛くんは本当に違うの!信じて...』
縋るような声音に耐え切れなくなって凛は一方的に通話を切った。
もっとゆっくり話すつもりだったのに、これ以上話していると余計汐のことを信じることができなくなりそうだった。
それに、汐を傷つけるようなひどいことを言ってしまいそうだった。


役を終えた携帯電話を握りしめる。

「なんだよそれ...」
胸の奥を何者かに握りつぶされたように心が苦しい。


凛は夜空を仰いだ。雲の切れ間から見える星空がじんわりと霞んだ。

所詮、自分の〝好き〟は一方通行だったのだろうか。
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