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Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love



携帯電話のディスプレイには22:37と表示されていた。
凛は寮の部屋のベランダに立っていた。
ゆったりと流れる雲の切れ間から時折星空が覗く。
湯冷めするとわかりきっていても風呂上りの火照った身体には外気は涼しく快適なものだった。
しかし季節は11月、冬の初めだ。あまり長く外にいると風邪をひいてしまいそうだ。

凛はぼんやりと待ち受け画面で微笑む汐を眺めていた。どうやって話を切り出そうか、そんなことを考えながら。
暖かい部屋にいるよりも寒いベランダにいたほうが頭がすっきりして考えがまとまりそうだった。
どうやって言おう?どう話したらうまく伝わる?
汐が自分から話すまで知らないふりをする、という選択肢は浮かんだ瞬間切り捨てた。
好きな人を疑った状態で一緒に過ごすなんてできないと凛は思う。

画面の中の汐を見ていると、突然違う画面に切り替わった。

「っ!」


着信だった。表示される名前は〝榊宮 汐〟。
1時間くらい前に汐からきたメールに〝10時半くらいにあたしから電話するね〟とあった。
2回のコール音の後、凛は通話ボタンを押した。

「もしもし」
『あーもしもし凛くん?電話ちょっと遅くなっちゃってごめんね。お風呂入ってた』
聞こえてくるのはいつも通りの汐。
むこうが変に緊張していないことに凛は少し安堵する。
あまり深刻に身構えられても切り出しにくいだけだ。

「別に構わねえよ」
『ほんとに?なんかごめんね』
「ああ。...汐、お前髪乾かしたか?」
『?うん。ちゃんと乾かしたよ』
長電話になるかもしれないから訊いた。
髪が濡れた状態で長電話なんてしたら汐が風邪をひいてしまうかもしれない。
ベランダに立つ凛は手すりにかけていた少し厚手の上着を羽織った。

『ね、凛くん。話ってなに?凛くんの悩みごととか?』
元気のなかった凛を気にしていてくれたのだろう。汐の声は真剣だった。
電話での声は普段直接話すときの声とは少し違った。
4月の終わり、凛が携帯電話を落として汐が拾ってくれた際に電話を通して聞いた優しくて明るいそれだった。
その声に、出会ってから今までの汐が記憶の中で花開く。

ちゃんと話そう、そう思った。

「いや、俺のことじゃなくて汐のことだ」
『...、あたしのこと?』
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