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Destination Beside Precious

第6章 4.Wanna Monopolize Love


「え、キス?」
改めて面と向かってキスをしたいと言われるとさすがに照れるらしく、汐は一瞬目を見開いて頬を染めた。

ここは閑静な住宅街だ。周囲に人気もなく、今この瞬間は凛と汐ふたりだけの空間だ。
汐はあたりを見渡した後、凛の両手を握って控えめな照れ笑いを浮かべながら凛を見つめた。

「...いいよ」

汐の言葉をうけると凛は汐の手を引いて電柱の陰に隠れるようにして汐を抱きしめた。


「お前やっぱあったけぇな...」
「...うん」
泣きたい気分だ。
自分の胸に収まる汐に愛しさを覚える。
先ほどまで汐のことを疑っていたことさえばかばかしく思えるほど。

「汐...」

上を向いた汐の唇に自分の唇を重ねる。
いつもより濃厚だった気がする。
独占欲が湧いてきてしまった。
長いキスに息が続かず酸素を求めて離れる唇に、逃がすまいと言わんばかりに唇を重ねる。
このまま食べてしまいたいくらい好き。
いつから俺はこんなに重くて小さい男になったのだと、汐の唇を奪いながら凛は意識の端で自分を嘲る。

「りんく...、んっ...、んぅ...」
「汐、好きだ」
唇を離して汐を抱きしめた。
潤む瞳を伏せて汐は広い背中に腕をまわす。

「あたしも、好きだよ凛くん」

汐が男を弄んでいるようには思えない。
何かの間違いかもしれない。やはり本当のことが知りたい。
チームメイトから聞いた話について、ちゃんと汐と話そうと思った。



駅の改札を背にして凛と汐は向かい合う。
先ほどの濃いキスの余韻もあって、あれから凛と汐は手をつないで終始無言で駅まで来た。

「なあ汐」
「ん?」
「今夜、電話いいか?話がある」
「?いいよ。そんなに改まって、どうしたの?」
汐の瞳に一瞬だけ翳が差したのを凛は見逃さなかった。
しかし、いきなり改まって話があると言われて身構えない人などいないと思い凛は見て見ぬ振りをした。

「ちょっと訊きたいことがあるだけだ。心配すんな。...もう電車来るぞ。気ぃつけて帰れよ」
汐の額に優しくキスを落として凛は頭をぽんぽんと撫でてやる。
いつもしてくれる一連の挨拶に汐は安心したのか、柔らかな笑みを浮かべてじゃあねと言って、改札口へ向かう。

凛は改札の向こうに消える前に振り向いた汐に一瞥をくれた後、寮に帰るべく踵を返し、すばやく思考を巡らせる。

今夜、どうやって話を切り出そうか。
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