Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
凛はベッドに横になりながら携帯電話を握っていた。
先ほどのチームメイトの話が頭の中で呪詛のように響く。
振り切ろうとしても余計凛を捕らえて離さない。
(どこまでが事実なんだ...)
今になって気がついたことがあった。
汐は昔の話をしようとしないのだ。
それを踏まえるとやはり、そういうことだったのかと妙に腑に落ちてしまう。
そうなると先ほどのチームメイトの話が〝すべて〟事実に思えてしまう。
だが凛は信じたくなかった。
本心では、今すぐ汐に電話をかけて真実を確かめたいと思っていた。
しかし今電話をかけると自分は感情的になってしまうことが目に見えていたから、走る気持ちなんとか抑えつつ冷静になろうと努める。
凛は手にしていた携帯電話を開いた。
ディスプレイには微笑む汐がいた。
映画デートをしたときに立ち寄ったカフェで撮った写真だった。
そういえばあの時は映画見た後で汐がポップコーン食ったくせにお腹すいたとかいうから...と凛は少しだけ救われたような、微笑ましい気持ちになる。
〝凛くん〟という声が今にも聞こえてきそうな笑顔だった。
(この笑顔を、他の男も...)
タールのようにどす黒く粘着質な気持ちが芽生える。
この笑顔を自分の知らない男に向けていた?
自分の知らない男があのやわらかな唇を楽しんだ?
そいつはもしかしたら彼女の身体を愛したのかもしれない?
凛は眉を寄せた。凄まじい嫌悪感が胸をえずく。
愛情とは恐ろしいものだ。
好きだ、愛しい、大切にしたいという感情と同じくらい膨れ上がるのは、独り占めしたいという独占欲。
彼女の心も身体も俺で満たしたい、という欲求さえ湧き上がる。
しかし膨れ上がる独占欲のすぐそばで一抹の不安が火を灯した。
そんなに恋愛遍歴が派手なら、もしかしたら自分は遊びなのかもしれない。
女々しすぎると凛は自分のことながら唇の端を歪め、嘲笑した。
たかがチームメイトがしていた噂話でここまで心をかき乱されるなんて我ながら情けないと思う。
しかし、汐の外見や行動1つ1つがその噂話に信憑性を持たせている。
ifの話を考えすぎて今この瞬間、凛は汐に対して疑心暗鬼になっていた。
だがここまで考えすぎるのは、皮肉にも汐のことが本気で好きな証拠でもある。
汐も、同じ気持ちだろうか。