Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
部活が終わって凛は寮の食堂でチームメイト2人と夕食を食べていた。
今日のメニューはご飯とみそ汁にほうれん草のおひたしとポークソテーだった。
普段ならば似鳥も一緒に夕食を食べるのだが、今日はたまたま部活が終わった後外へ買い出しに行ってしまって席を外していた。
3人は学校であったクラスメイトや教師の笑い話をしながら和気藹々と夕食の時間を楽しんでいた。
「なあなあ、今日スピラノの汐ちゃん来てたよな」
「土曜の打ち合わせだろ」
「もう3日後になるのかー」
1人が思い出したようにそう言った。もう1人もそれに同調した。
凛は味噌汁の椀に口をつけながら黙って聞いていた。
「久しぶりに見たけど相変わらず可愛いよなー」
「ほんとだよな。あんな可愛いマネージャーがいるなんてスピラノがうらやましいぜ」
もし汐が鮫柄水泳部のマネージャーだったらを妄想してふたりは幸せそうな顔をした。
その可愛い汐の彼氏である凛は黙ったままほうれん草を咀嚼する。
〝汐可愛いだろ!俺の彼女だ〟
という言葉が喉元まで上ってきたが下手になにか言うと根掘り葉掘り詮索地獄にはまるから、それはほうれん草と一緒に飲み込んだ。
「さっきから黙ってるけど松岡はどうなんだよ?」
「はっ?」
思わず間の抜けた声が出てしまった。
どうもこうも、彼女。
と、言いたかったがそれは言えない。
凛も汐も部活とプライベートは切り離してるから、チームメイトには付き合っているということは明かしていない。
「榊宮だろ?別に、可愛いんじゃねーの?」
2人に合わせつつ当たり障りのない答えを返した。
「なんだよその可もなく不可もなくみたいな答えは」
「そうか、松岡クラスのイケメンはあのレベルが普通なんだろうな」
「ちげえよ」
「そういえば松岡この前やったゴムの出番はあったか?」
「お前食事中にそういう話はやめろよ」
「松岡はぐらかしてんじゃねーよ」
汐の家に泊まりに行った夜凛が持っていた避妊具は彼からもらったものだった。
けらけら笑いながら凛を茶化す2人に対して眉間にしわを寄せながら凛は箸でポークソテーをつまんだ。
「そういえばこれクラスのやつから聞いた話なんだが、汐ちゃんいるだろ?あの子かなり派手な恋愛遍歴持ってるらしいぜ」