Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
「凛くんトリックオアトリートー!」
「は?」
10月も今日で最後、という日に凛と汐は手を繋いでふたりで歩いていた。
日が落ちるのもすっかり早くなり、汐を包む制服はもう冬服だった。
ふたりが初めて出会った時や、出会ってすぐまだふたりの会話がぎこちなかった時に汐が着ていたものだ。
明日から11月。夜風や空気は秋の冷えではなく冬の寒さだった。季節の移り変わりを凛は肌で感じた。
「は、って、今日ハロウィンでしょ?だからトリックオアトリートって」
「あっ。ああ。って、俺菓子とか持ってねえよ?」
「じゃあイタズラしていい?」
汐は繋いだ凛の手を引っ張りながらいたずらな笑みを浮かべた。
そのあざとさに心の中でにやけながら凛は口の端をあげた。
「どんなイタズラしてくれんだ?汐チャン?」
「えー?...えーと...。....なにしよう?」
「考えてねぇのかよ」
「だって凛くんお菓子持ってると思ってた」
男子校である鮫柄では体育祭や文化祭など体を動かすような行事は盛り上がるが、ハロウィンなどのイベントは盛り上がりに欠ける。
だから今日がハロウィンでも特にお菓子を用意するだとか、そういうことはしていなかった。
男だけでイベント盛り上げても虚しいだろ女子が欲しい!!なんてクラスメイトが騒いでいたのを凛は思い出した。
「俺たち男しかいねーからハロウィンみたいなイベントは盛り上がんねーんだよ」
「そうなの?あたしたちは学校でも部活でもすごく盛り上がったよ」
汐の話を聞くと、どうやら学校ではお菓子パーティーをしたらしい。
トリックオアトリートと言ってきた人全員にお菓子を配ったようなことを汐は言っていた。
「部活では何をやったんだ?」
「あー、今日はね!プールを使わずに外で陸トレだよ。ハロウィンだからみんなでコスプレして」
「...は?え、コスプレしたのか?」
どうやら凛の想像以上にスピラノはハロウィンを満喫していたようだ。
「うん。許可とって毎年やってるよ。敷地全部使ってコスプレ鬼ごっこ」
「すげぇなスピラノ。お前はなんのコスプレしたんだ?」
「あたしは魔女だよ。露出が多くて寒かった」
魔女のコスプレをしている汐、しかも肌が多く出ているらしい。
ここは彼氏としては是非とも見てみたいものだったが、それをぐっと呑み込む。
「そうか、風邪ひくんじゃねぇぞ」
「ねー、ありがと!」