Destination Beside Precious
第6章 4.Wanna Monopolize Love
「で、服なんか脱いでなにしてたんだよ?」
「これはそのー...、なっ、なんでもないです!」
「や、なんでもないわけねぇだろ...」
呆れたような視線を凛から感じるが、早脱ぎの練習をしていたなんて恥ずかしくて言えない。
似鳥は上着に袖を通した。
その時、凛の手の中にある携帯電話のバイブがなった。短い。メールだろうか。
似鳥は服を着ながら凛の様子を見る。
(ここのところ、ずっとそうだ...)
凛は〝誰か〟とメールをしているとき、笑っていた。
いや、笑っているというよりかは穏やかな表情をしていると表現した方が正しいかもしれない。
それに以前と比べて確実に携帯電話を触っている時間が増えた。
さっきもそうだ、携帯電話を持って30分ほどどこかへ行っていた。恐らくどこかで電話をしていたのだろう。
同じようなことが夏休み明けから多々あった。
理由になんとなく心当たりはある。今まで聞けなかったが、似鳥は恐る恐る訊ねてみた。
「凛先輩、彼女さん...できたんです...か?」
「どうして」
凛の眉が動いた。
違うのなら違うとはっきり言う凛が否定してこない。ということはそういうことなのだろう。
「お相手は、スピラノの榊宮汐さんですか...?」
「!」
今度はもっとあからさまな反応だった。間違いない。
そしてそれは凛の次の言葉で確かなものになった。
「ほかの奴らには言うなよ」
「!はいっ!」
どうやら凛はまだほかの誰にも言っていないということだ。
それを自分には隠さないでくれたということに似鳥は天にも召されるような気分になる。
「あいつ、汐のほうも親友の璃保にしか言ってないらしい。だから俺もほかの奴らに話さないつもりだ」
「どうして秘密なんですか?」
凛は交際を隠すようなタイプではないと似鳥は思う。
ではどうして汐と付き合っていることを隠そうとするのだろうか。
「これからもあいつの学校...スピラノと合同練習があるだろ。冷やかし防止だ」
なるほど、と似鳥は思った。
冷やかし防止というが、実際は汐を守るためだろう。
「そういえばさっき食堂で部長と副部長が話してたんですけど、11月にスピラノと合同練習やるみたいですよ」
あくまでも予定だが似鳥は楽しみだった。
スピラノのマネージャーを〝マネージャー〟と〝凛先輩の彼女さん〟という2つの観点で見れるのは自分だけだから。