Destination Beside Precious
第5章 3.Kiss? or More?
「へぇ、そうだったのね」
璃保は声をあげた。
一通り話し終わった汐は頬が上気しているのを感じた。
「じゃ、おめでとう汐」
「え?なにが?」
何に対しておめでとうなのか、汐の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「なにって、したんでしょ?セックス。処女卒業おめでとうってこと」
「ああ、してないよ」
当たり前のように言ってきた璃保に対して汐はやんわりと告げる。
「...は?え、ヤんなかったの?そのシチュエーションで?」
「うん」
信じられない、と璃保は絶句していた。
璃保の驚きように胸がチクチク痛んだが汐は平静を装う。
「...なんで?」
「...なんでかな?」
なぜ、と訊きたいのは汐のほうだった。自分でも絶好のシチュエーションだったと思う。
「覆いかぶさってきてディープキスしてキスマもつけられたんでしょ?」
「なんか改めて単語にされると恥ずかしいんだけど...、そうだよ」
顔が熱い。嫌というほど頬が紅潮していることを思い知らされる。
あの晩した凛とのキスを思い出すと、身体の奥深くが疼くような感覚を覚える。
濃厚で蕩けるような気持ちの良いキスだった。
このまま凛に抱かれたいとあの時汐は思った。
「やっぱあたしじゃ、だめなのかな...。すごく愛されてるとは思うけど、女としてはまだ見てもらえないかな...」
〝女の子〟としてではなく、ひとりの〝女〟として見てもらいたかった。
大好きだから、ずっと一緒にいたいから。
しかしそれは自分の方だけかもしれないと考えると寂しくなる。
「女として見てないってことはないでしょ。てか、...」
「ん?」
璃保は汐の胸元をちらりと見た。
そしてひとつ息をついて真面目な顔になった。
「汐の胸みて、アンタのこと女だと思わない奴は男じゃない」
「む、っ...」
一気に顔が熱くなったのがわかった。
璃保はストレートすぎる、と汐は思った。どう反応していいかわからない。
「さっき一緒にお風呂に入って思ったんだけど、やっぱ汐スタイルいいわね。胸はDカップくらい?」
「...そうだよ」
先ほど璃保と汐は一緒にお風呂に入った。
小学生以来ね、と柄にも無くはしゃいでいた璃保を思い出す。
「くびれもあるし巨乳安産型の体型じゃない?羨ましい」
「璃保...あの、一応気にしてるんだからもうちょっとオブラートに包んでくれると嬉しいな...」