Destination Beside Precious
第5章 3.Kiss? or More?
胸が大きいとはあまり考えたことはなかったが、お尻が大きい上に太ももがむちむちしているのは気にしていた。
俗に言う下半身デブだと悩んでいたのである。
「気にしてたの?アタシはすごく魅力的だと思うけどね」
「璃保、もう...」
「ま、体型の話は置いといて、あの夜汐は凛に抱かれる覚悟は出来てたってことでしょ?」
「覚悟っていうか...そうなってもいいかなとは思ってた」
実はあの晩汐はこっそりと新調した可愛い下着をつけていた。
「実はね、あたしあの夜新しい下着...ちょっと可愛いもの用意してたんだよね。それなのに凛くん何もしてこなくて、あたしばっかり張り切っちゃって恥ずかしい...」
「...、汐可愛すぎ...っ」
「ちょっと璃保、笑わないでよ...あたしはほん...」
静かに笑っていた璃保は、ふいに笑うのをやめて神妙な面持ちになった
「そうね。汐はもう覚悟出来てるのかもしれないけど、凛はまだみたいね」
「...そだね」
「大丈夫よ、キスに舌を絡めてきた上にキスマまでつけたってことは汐に対してそういう欲を持っているってことだから」
味わうようなディープキスをしたあと、喉に鎖骨に首筋にキスを降らせたあと、凛はどんな瞳をしていただろうか。
汐にそれを確かめる余裕はなかったが、あの時凛のルビーのような赤い瞳は官能的に揺れていた。
しかし本能の中に残る理性でそれを抑えた。
璃保はああ言ってくれたが、まだセックスをするのは早いという凛の考えを汐は知る由もないから、自分は情欲の対象ではないと思ってしまう。
「多分、凛は汐のこと傷つけたくないのよ」
だから凛のこと信じてやりなさい、と璃保は優しく微笑みながら汐の頭をぽんぽんと撫でた。
凛があの夜つけたキスマークはまだ消えることなく、赤紫色に存在を主張する。
ちょうど髪で隠れて周囲には見えない部分につけてくれた。
キスマークは愛の噛み跡とも呼ばれる。
愛の証拠であるのに寂しくなるのは何故だろう。
それをさすりながら目を伏せ、優しい璃保と、優しすぎる凛を想い汐はそうだねと微笑んだ。