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Destination Beside Precious

第5章 3.Kiss? or More?



〝入浴剤は棚の中にあるから好きなの使ってね〟と言われて棚を開けて思わず驚いたことを凛は思い出した。


(榊宮家は入浴剤コレクターかよ…)

入れ替わるようにして汐が風呂に入ってから結構な時間が経っていた。


凛は汐の部屋にいた。
リビングでテレビ見ててもいいし、あたしの部屋で待っててもいいし、どうしたい?と訊かれたから汐の部屋で待っていることにした。
その際、汐の卒業アルバムを見て待っている許可を得たから凛はそうしていた。

見ていたのは中学の卒業アルバム。
汐と璃保は同じクラスで3年蘭組だったらしい。
汐の方はまだ少し幼さの残る顔立ちだったが今の面影を窺うことができる。
一方璃保はやはりここでも他の人と比べて落ち着いた大人の雰囲気を纏っていた。


(やっぱよく似てんなー…)

卒業アルバムの中で微笑む汐の顔立ちが、弟の夏貴とよく似ている。
ただし夏貴のように刺々しいオーラは纏っていないが。

個人写真の他に委員会や部活動、クラスや学校生活の写真がたくさん掲載されていた。
汐たちが3年のときの写真だけでなく、2年や1年の時の写真も掲載されている。
遠足、体育祭、文化祭、行事の写真がページにたくさん散りばめられていた。

凛はその中で、ある1枚の写真に目を奪われた。


(こいつは…)

思わず息を呑む。
それには3人の少女が写っていた。
4年前の写真でもわからない筈がない。
青みがかった黒髪の子、璃保。赤みがかった茶髪の子、汐。あとひとり、黄みがかった茶髪の―…。


(海子…)

今は亡き、汐と璃保の親友の上嶋海子だった。
とても仲が良かったという話を汐から聞いていた。
写真を見ただけで仲の深さがよく分かる。

それは体育大会の写真だった。
リボンカチューシャのようにハチマキをつけている汐、スタンダードにつけている海子、つけていないのか持ってきていないのかよくわからない璃保。
ハチマキひとつにしても個性が出ていて凛は思わず吹き出しそうになった。

微笑ましい気持ちになったが、同時に胸が締められる思いもした。

この写真は海子がいた頃の写真。
〝生きていた〟証だ。
後のページに海子はいない。
〝生きていた〟証は、〝今はいない〟ということをより鮮明に突きつけてくるように感じた。

汐はこの写真を見た時何を思っただろうか。
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