• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第5章 3.Kiss? or More?


「あー凛くん適当に座ってー」
ああ、と返しながら凛はソファに腰を下ろす。
コトンという音と共に、汐は凛の前にお茶の入ったグラスを置いて微笑んだ。

「凛くん、お風呂入れてくるから待っててね」
ドアの向こうに消えていく汐を眺めながら凛はグラスを傾ける。
改めて部屋を見渡す。相変わらずものの少ない部屋だ。
ソファにテーブルにテレビに、部屋の広さに対して家具が少なすぎると思う。
どうしても生活感が感じられなくて落ち着かない。

「凛くんお待たせー」
「早ぇな!もうわいたのか?」
ものの1分もしないうちに戻ってきた汐に凛は驚いた。
そんな凛に対して、何言ってるのとでも言いたそうな視線を向けて汐は隣に座った。

「栓してボタン押してきただけだよ」
「そ、そうか」
どうやら自動でわくタイプの風呂らしい。


「今日夏貴はどうしたんだ?」
「あー夏貴はSCの試合だよ。遠いから泊りがけなんだって」
「やっぱあいつ水泳やってたんだな」
体つきからしてなんとなくそうだとは思っていた。
服の上からでもわかるほど均整のとれた体格だった。

「うん。小学生のころからずっとやってるよ」
「中3だろ?高校どうすんだ?」
中3の10月中旬。もう志望校は決まってる時期だ。
小学生の頃から水泳をやっているということは恐らく高校でも続けるだろう。

「どこ行くんだろうね?」
「お前姉貴だろ?知らねぇのかよ!」
「だってそういう話あんまりしないからね。それに夏貴は頭良いからどこでも問題ないと思うよ」
姉貴しっかりしろよ!と言いたげな凛を軽くあしらいつつ汐はまとめた。
あの凛に対して悪態をつく夏貴、実は勉強も得意なようだ。


「ま、勉強できるんなら心配は要らなさそうだな」
と言いつつ、お節介が過ぎたかと凛は口の端を少しあげる。
汐はそんなことを気に留める様子もなくいつも通りだった。

「つか、汐の両親って忙しいんだな」
「あー、お母さんが忙しいの。今日もなんかの取材?でどっか行ってる」
「大学の准教授だったか?」
「そうだよ」
汐の母親は大学の准教授を務めている。
どうやら取材やら研究やらで忙しなく動き回っているそうだ。

「親父さんは?」
「お父さんは一緒に暮らしてないよ」
「…は?」
母子家庭なんて聞いてねえ、と内心焦る。
聞いてはいけないことを聞いてしまったと返答に困ってしまった。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp