Destination Beside Precious
第4章 2.Only You Are Seen
「凛、今日も必勝祈願に来たのか?」
「今日は汐だ。昨日も言ったが、わざわざ神様にお願いしなくてもお前には実力で勝てる」
「あっ、凛くんの必勝もお願いしといたよー!」
「よかったな!可愛い彼女に祈ってもらえて」
「うるせぇよハル!それと汐、お前もう黙ってろ」
「えー凛くんそれひどくない?」
珍しく挑発的な表情な遙に凛は食らいつく。
売り言葉に買い言葉で睨み合って火花を散らす遙と凛のことなど気にしない、むしろ楽しそうな汐。
その様子を眺めていた真琴は、そろそろ片をつけなければと動き出す。
「凛、これから汐ちゃんとデートだろ?ごめんね、邪魔しちゃって」
穏やかな笑顔を凛と汐に向ける。
ちらりとふたりの手に視線をやる。
あれほど遙を含めた3人で騒いでいたのにふたりは手を繋いだままだった。
「別に邪魔されたとは思ってねぇよ…」
「そうですよー。むしろあたし真琴くんと遙くんに会えてよかったって思ってます!」
真琴は汐を見た。視線がぶつかる。
暗い中で見ると汐の瞳は深い薔薇色だった。
改めてじっと見ると、先週凛から見せてもらったプリクラよりも実物のほうが可愛いと思う。
大きな丸いアーモンドアイにふっくらとした唇。
小柄で小動物を思わせる可愛さだと真琴は思った。
「真琴くん?どうしました?」
「えっ?あぁ、なんでもないよ」
可愛くて凛とお似合いだと思った、と言ったら間違いなく凛に怒られるだろう。
見える危険にはなるべく飛び込まない。
「じゃ、俺たちは行くからな」
「うん。デート楽しんできてね」
「ありがとうございます!」
「凛!」
露店のある通りへ向かおうとした凛を真琴は呼び止めた。
「んだよ?」
足を止めた凛は振り向いた。
凛の元へ歩み寄り、そっと耳打ちをする。
「このあと…」
「そーだよ」
「がんばれ」
こそこそと会話する真琴と凛。もちろん汐には聞こえない声で。
〝がんばれ〟この言葉にすべてが込められている。
このあとどうなるかは凛次第だ。
「おう」
それだけ返して凛は汐の手を引いて歩き出した。
「真琴、凛に何を言ったんだ?」
「ん?えっと…」
遙は今夜凛が汐の家に泊まることを知らない。
正直に言っても遙にはなんのことだかわからないだろう。
どう話したらいいだろうか。