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Destination Beside Precious

第4章 2.Only You Are Seen


「でも、何考えてるかわからないって思うってことは、なにかあったの?」
「なにか、ん、なにかって言うか…」
「言うか?」
「…」
「喧嘩でもしたの?」
なかなか言おうとしない凛に真琴は問いかける。
そんなに言いづらいことなのだろうか。
言いたくないなら無理に言わなくていいよ、そう言おうとした時に凛は呟いた。

「…うちに泊まりにこないかって誘われたんだ」
「うん。…って、え?」
「ってなるだろ!?俺どうすりゃいいんだよ?!」
「どうすればって、行けばいいんじゃない?」
そういう問題じゃねえんだよ、と凛は頭を抱えた。
一方真琴は凛が頭を抱える理由が分からずぽかんとする。
一体なにを凛はそんなに悩んでいるのだろうか。

「なにか困りごとでもあるの?」
「お前わかってんのか…?夜、2人きり、だぞ?」
「!ああ…」
真琴は周囲を確認したあと、頭を抱える凛にしか聞こえないような大きさの声にボリュームを落とす。
夜、彼女の家に2人きり、ということは…

「凛、その夜さ、するつもり?」

彼女…好きな女の子と一緒に一晩を過ごすのだ。
今時、年頃の男女が夜一緒のベッドに入って何もないという方が珍しいだろう。

「…俺はまだ早いと思ってる」
「ならしなくてもいいんじゃない?」
「でも汐はそのつもりで俺を誘ったのかもしれねぇし…」
「汐ちゃんのほうからそういう状況を作ったってことは、少なくとも…」
「いや、でももしかしたらそういう考え全くねぇかもしれねぇし…」
「訊けないから分からないよね…」
「そうなんだよ…」
だから悩んでんだ、と凛はさらに頭を抱えた。
付き合い始めてから初めてセックスするまでの期間が短いと体目当てだと思われかねない。
その考えが凛を悩ませていた。

最近まで過去に囚われ藻掻き苦しんでいた凛だった。そんな凛の今の悩みが年頃の男子高校生すぎて真琴は思わずクスリと頬が緩みそうになるのを押しとどめる。

「この状況で触れあったりキスしたりしたら、俺は我慢できる自信がない…」
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