Destination Beside Precious
第4章 2.Only You Are Seen
「ねえ、もっといろいろ教えてよ。汐ちゃんのこと」
「あ?あー…汐のこと…学校はお前が言った通りスピラノだ。水泳部でマネージャーやってる。チビで…なんとなくゆるいやつ」
「ゆるいの?プリクラ見た感じしっかりしてて気が強そうな風に見えるけど」
「気ぃ弱くねえししっかりした女だが、話すとゆるさがわかるぜ」
所謂、ギャップというものだろうか。
凛はそこに惚れたのだろうか。
以前岩鳶水泳部に凛を加えた5人で好きな女の子のタイプの話をしたことを思い出した。
確か凛は、自立していてしっかりした子がタイプだと言っていたような気がする。
「じゃあ凛はそのギャップに惚れたってこと?」
「…どうだろうな。優しくて人当たりがよくて、面白いから一緒にいて楽しいんだよな」
「うん」
「けど、そんな奴探せばいっぱいいるだろ。なんつーか汐は放っておけねーんだ」
確かに汐は誰からも愛されるオーラを纏っていると真琴も思う。
ただ、凛が汐のことを放っておけないと思う理由はそれだろうか。
「…笑顔の中にどこか陰があるんだ」
汐と付き合い始めてもうすぐ2ヶ月になる。
その中で凛が気づいたことだった。
いつも笑顔で優しいが、ふとした瞬間に醒めたようなどこか達観したような雰囲気を纏う瞬間があると凛は思うのだ。
しかしそれは気のせいかもしれない。
「何考えてるかわかんねーとこもあるんだよな」
「それは普通のことじゃない?」
「そういうものなのか?」
「俺とハルみたいにずっと昔から一緒にいればお互いのこと知り尽くしてるような感じになるけど、凛たちはまだ出会って5ヶ月ちょっとだろ?」
「ああ」
「だったらまだこれからでしょ」
「それもそうだな」
汐のことを話す凛は今まで真琴が見たことないくらい幸せそうな笑顔を浮かべる。
凛は本当に汐のことが大好きなのだろう。