• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第4章 2.Only You Are Seen


「…どこで」
凛は眉を寄せた。
凛の仏頂面に臆することなく真琴は答える。

「先週の今日、ちょうどここだったよ。凛たちは別のお店に入ろうとしてたのかな?」
「…」
「赤茶色の髪の毛で小柄な子だよね?あー、あとあの制服だとスピラノ?」
「…!」
凛の眉が動いた。
この反応、おそらく当たりだ。

「お前、あそこにいたのかよ…」
項垂れた凛の顔が赤い。
はぁ、とため息をついて顔をあげた。

「ね、やっぱり彼女なの?」
「…そうだよ。わりーかよ」


(凛顔真っ赤…)

真琴が考えたとおり、あのとき凛と一緒にいた女の子は凛の彼女だった。
どんな女の子だっけ、と真琴は思い出そうとする。
しかし1週間前、しかもちらっと見ただけだったから大雑把な特徴以外は思い出せない。


「ね、名前は?」
「教えねー」
「えー、なんで。教えてくれたっていいだろー」
「断る」
頑なに教えようとしない凛。
ひとつ息をついて真琴は笑顔を作る。
きらきら…という効果音のつきそうな笑顔を。

「ねえ凛?」
「…」
「ほら?」
「…」
「恥ずかしがらずに」
「…」
「ほ…」
「っだああ!うるっせぇな!汐だよ汐!榊宮汐!!」
真琴のきらきらとした王子様スマイルの圧力に負けた凛は吐き出した。
ぶつぶつと文句を言いながらコーヒーのグラスに口をつけた。

「へえ、汐ちゃんって言うんだ」
「ああ」
「可愛い?」
「…可愛いよ」
凛の口から可愛いという言葉が出てきたことに少し驚く。
顔が、という意味で訊いたわけではなかった。
凛はどちらの意味でとっただろうか。

「写真とかないの?凛の好きな人見てみたい」
「写真ー…?ねぇよ。あったとしても見せねーよ」
「えー、じゃあプリクラとかは?」
「あー…プリクラならある」
携帯の画面を眺めながら凛は答えた。
少しの間の後、画面を真琴の方へ差し出した。
写真は見せようとしなかったのにプリクラならいいんだ、と真琴は思いながら笑顔を浮かべる。

「可愛いね!凛とお似合いだと思うよ!」
映画でーと。と落書きの入ったプリクラ。
プリクラは補正が入るというが、その補正が無くても可愛いことがわかる。
大きなアーモンドのような丸目と、きゅっと上がった口角や眉毛が魅力的だと真琴は思う。
交際を始めてから初めて撮ったらしく、ぎこちなさと初々しさが2人の間の距離に出ていて微笑ましい気持ちになった。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp