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Destination Beside Precious

第4章 2.Only You Are Seen


「...汐お前、理系...だったのか?」
「そうだよーリケジョってやつ」
ちなみに璃保もそうだよ、と汐は付け足した。
今までの汐の話を聞いている限り、国語や地歴科目が得意なことが一目瞭然だった。
汐のことを文系だと思い込んでいた凛からしたら衝撃の事実だ。

「それは知らなかったな...。でもお前文系科目の方が得意じゃなかったか?...将来は理系の進路に進むつもりか?」
「...、そんなかんじ...かな」
汐はシャープペンシルを置いた。


「ねぇ凛くん」
「ん?」
「あたしもう帰ろうと思うんだけど」
凛はケータイで時間を確認する。まだ15:30を少し過ぎたくらい。

「もう帰るのか?」
「...うん。ごめんね」
「いや別に、そういうわけじゃねぇけど」
汐は立ち上がった。
それに合わせて凛も立ち上がる。
荷物をリュックに詰めてそれを背負おうとしたとき、凛が汐の手を引いた。

「わっ」
帰らせたくない、思ってもその言葉は口にすることができなかった。
だからかわりに汐の手を引いた。
その拍子に背負おうとしたリュックを汐は落としてしまった。
どさっと大きな音がした。
下の部屋の人に響いてないかな、とたわいもないことが汐の頭の中に一瞬だけよぎった。

「1週間ぶりにゆっくり会うことができたっつーのに、まだキスのひとつもしてねぇんだけど」
汐の手を腕を伝って凛の手が汐の頬に触れ、そのまま汐の頬を撫でる。
気持ちよさそうに汐は目を細めた。


「んっ...」

汐は自分の唇に凛の唇が押し当てられるのを感じた。
ちゅっ、ちゅう、とまるで1回じゃ満足できないと言わんばかりのキスだが無理やり唇を割ろうとはしてこない優しいキスだった。

「凛くんのキス魔...」
唇を離した凛に甘く咎めの言葉を口にしながら、そっと広い背中に手を回した。
口ではそう言うが、汐の気持ちは凛の背中に回された手が物語っている。

「海外じゃキスは挨拶だぜ?」
シニカルに凛は笑ってみせる。
その笑みとは対照的に汐の腰に回された手は遠慮がち。
無理やり引き止めるような真似をしたことを凛は少し後悔した。

「ここは日本だよ?ね、今のちゅーも挨拶?」
凛の笑みに対抗するかのように汐はおどけたような声と笑いを凛に向けた。

「ばーか。挨拶のキスは唇にするモンじゃねーよ」
挨拶はこっちだ、と言って今度は頬に軽くキスをする。
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