• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第4章 2.Only You Are Seen



「スピラノ中間テストはやくねぇか?」
凛は数学の教科書を眺めながら汐に問いかけた。
この日は寮の凛の部屋にてお勉強会だった。

「あーそうなの。テスト終わって次の週から修学旅行だからね」
凛の問いかけに汐は数学の問題集から目を離すことなく答える。
ときどき教科書をパラパラ捲ったりうんうん唸りながら考えている。

「修学旅行?どこに行くんだ?」
「オーストラリアだよ」
お、と思った。
オーストラリア。凛にとって思い入れのある国だ。

「ん、この時期だとゴールドコーストか?」
日本では10月で秋だが、南半球に位置するオーストラリアでは春にあたる。
昼間ならゴールドコーストのビーチも暖かいだろう。

「そう、行くー。あー、あとシドニーも行く」
「俺4年間シドニーに住んでたが、いいところだぜ」
「ほんとに?楽しみー!」
シャープペンシルを置いて凛に笑いかけた。
滅多に行かない海外旅行ということもあるが、凛が4年間過ごしてきた環境に少しでも触れることが出来ると思うと心が躍る。


「ま、そのためには」
凛は少し身を乗り出した。

「明後日からのテスト、しっかりやれよ?」
赤点なんて取るんじゃねえぞ、と言って上げられた口角からギザギザの歯が覗いた。

「はぁーい」
「返事は合格点だがお前、さっきから見てて進んでねぇぞ」
「あーここわかんなくて」
そう言って汐は苦笑いを浮かべる。
どうやら不定積分が解らないらしい。

「不定積分は微分の逆の計算だ。F(x)+C=∫f(x)dxの関係はF´=fと同じになる」
凛は例を挙げながら汐に説明していく。
理解できているかどうか確認しながらノートに解説を書き込んでいった。

「...わかったか?」
「...うん。すごい...」
できた、と汐は感嘆の声を漏らした。
凛の解説を聴きながら問題にリトライしたら、さらりと出来てしまった。

「凛くんすごいね、教えるのすごく上手」
「そうでもねぇよ、お前の頭がいいだけだ」
そう言ったが実際凛の教え方はとても上手い。
似鳥をはじめ、ほかの部員やクラスメイトも口を揃える。

「にしても、数学の範囲広くねぇか?」
「あー、広いよ。文系の2倍くらいある。...て、凛くんどうしたの?」
凛はぽかんとしていた。
今の汐のセリフの一体どこにそんなに驚いているのだろうか。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp