Destination Beside Precious
第4章 2.Only You Are Seen
遙は真琴が示した方を見た。
少し離れているが確かに赤い髪をした背の高い男がいた。
ちらりとのぞいた顔はつり目で鮫歯だった。
「凛だな」
「やっぱりそうだよね。声かけてく?」
「...待て」
凛の元へ行こうとした真琴に遙は制止をかけた。
止められた真琴は不思議そうに遙の瞳を見つめる。
「ハル?」
「あれを見ろ」
あれ、とはなんだろうか。
真琴は遙の言った通りに視線をやる。
すると凛の隣に背の低い女の子がひょっこり現れた。
凛の陰に隠れて気づかなかったというのもあるが、正直に言えば小さくて見えてなかった。
「...女の子?」
遙が止めてくれてよかったと真琴は胸を撫でおろす。
凛の隣にいる女の子。
樺色の髪を長めのボブカットにしている。
遠目でしか見ることができないが、背が低くて可愛らしい雰囲気の女の子だ。
「凛の友達か?」
「いや絶対彼女でしょ!」
凛と、その隣の女の子が手を繋いでることに遙は気づいていないようだった。
いや、もし気づいていても遙は友達だと言っていたかもしれない。
「彼女...、恋人か?」
「間違ってはいないけど、なんか違わない?」
「違うのか?」
彼女と恋人の違いを遙に説明するのはまた今度にして、真琴はふたりを見る。
「凛、すごい楽しそうだね」
「笑ってるな」
遙たちに向ける笑顔とはまた違った笑顔だった。
愛しい人に向ける、幸せと喜びが半々に表れた笑顔だ。
「凛、彼女いたんだな」
「そうだね、俺も驚いた。...けど、凛に彼女がいても不思議ではないよね」
外見もスペックも申し分無いと真琴は素直に思う。
性格は一癖あるが、不器用ながらも優しい人だ。
ただ、ひとつ気になるのは出会いのきっかけだ。
鮫柄は男子校だから、同じ学校の人というのはありえない。
「あの制服...スピラノかな?」
「スピラノ?」
遙はスピラノを知らないらしい。
しかし真琴も学校名と制服と女子校であることしか知らなかった。
「うん。たしか、お嬢様女子校って噂の」
「...知らない」
ちらりと凛たちの方を見た。
確かに育ちの良さそうな感じはすると遙は凛の隣の彼女を見て思った。
「...こっちに来るぞ」
「あっほんとだ...!じゃ、俺たちも行こっか」
凛たちのデートを邪魔してはいけないと思い、遙と真琴は本来の目的である全国ゆるキャラ市の会場を目指した。