Destination Beside Precious
第15章 12.Masked Family
しばらくそうされていた汐が、凛の背中をとんとんと叩いた。
「凛くんこのまま寝ちゃいそう。お昼寝する?」
「…汐と寝る」
正直のところ午前の練習もあり睡魔が限界に近く、座った状態で汐を抱きしめたまま寝そうだった。
優しさに甘えベッドに横になると、凛を追いかけるように汐も隣に寝転んだ。
「今日もお疲れ様」
柔らかな微笑みを浮かべながら汐は凛の頭を撫でた。
いつも自分が汐にしている事だが、逆にされる側になると幸せなことには変わりないがどうしても少し照れてしまう。
「なんつーか、いいな、これ…」
きゅん、と甘酸っぱく胸が高鳴る。
嬉しさと恥ずかしさを半々に、凛は頬を染めながら僅かに目を細める。
堂々巡りを繰り返す思考を頭の端に追いやり、今はこの幸せな時間を存分に味わおうと思う。
「しーお」
「りーんくん」
「すきだ」
「あたしはだいすき」
えへへ、と照れ笑いを浮かべる汐。
付き合い始めてもうすぐ9ヶ月、恋人関係になって4ヶ月経つのに、好きだと伝えると未だに汐は初々しく照れる。
ああもう、可愛くて、愛しくて、たまらない。
溢れた気持ちが抑えきれず、添い寝する汐をぎゅっと抱きしめてその唇に自分の唇を重ねた。
ふわりと溶けるようなキスだった。
唇を離すと、汐は惜しそうにいたずらな笑みを浮かべた。
「やだ、もっと」
ん、と顔を近づける汐。
キスをねだる姿が可愛すぎてつい意地悪をしたくなってしまった。
同じように顔を近づけて、触れるか否かの寸前で引いた。
おあずけを食らった汐は不服そうに頬を膨らませると、もう一度顔を近づけてきた。それをまたすんでのところで焦らす。
それを数回繰り返すと、汐は恨めしそうに凛を睨みつけた。
こんなに可愛い睨みを利かされたのは初めてだ。
「もう凛くんなんて知らない。誰ですかこのサメのおばけ」
そして凛のことをおばけ扱いして、そっぽを向いて拗ねだした。
「サメのおばけが腹空かせてたらどうすんだ?襲われるぞ。気をつけろ?」
シニカルに笑い汐の首筋に唇を這わす。そっと歯を立てると、色っぽい声と共に汐の肩が揺れた。
振り向いたその顔は雌だった。
「…寝るんじゃないの?」
「こんなになって、したくなっちゃうでしょ…」
時々とても大胆なことをする。
汐は服越しに当たる凛の雄を撫でるように触れた。
「…今ので眠気飛んだ」
「もう、都合よすぎ…」