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Destination Beside Precious

第15章 12.Masked Family



鮫柄学園を出た凛と汐はファーストフード店で昼食を摂った後、昨日約束した通り汐の家に向かった。
最寄り駅で下車し、家まで帰る道中ふと汐は凛に訊いた。

「そう言えば、さっきみんなで集まって何話してたの?」
さっき、とは汐を抜いた4人で話していた時のことだろう。
特に訝しんだ様子もなく、単純に話の内容が気になるようだ。

「んー…、璃保と合同練習のフィードバックしてたらそこに宗介と夏貴も来た」
汐のことを話していたなどとは言えない。
一瞬のうちに凛は思考を巡らせ、怪しまれる要素の無い嘘をついた。

「あーそうなんだ。璃保、なんて言ってた?」
「また県大会前にやろうって言ってた」
ミーティングをしていたと信じて疑っていない汐に対して罪悪感を感じながら凛は話を合わせる。
やたら長く感じる徒歩5分だ。早く家に着いて欲しい。
致し方ないとはいえ、汐を騙してることに変わりはないため胸が痛い。

〝姉さんを助けて〟
夏貴が昨夜そう言っていた。
助ける。それは母親から?それとも榊宮家から?
凛の中で迷いが渦巻く。そもそもどうして夏貴は自分に話してくれたのだろうか。
それに璃保だって知っていたのにどうして何もしなかったのだろうか。
いや、何もしなかったのではなく、出来なかったのだろう。
でなければ、璃保があんなに悔しそうに瞳を揺らすはずがない。
彼女達に出来なくて、凛に出来ること。
その答えはまだ見つからない。


「凛くん?」

繋いでいた手を引かれた感覚で、思考の中に深く沈みこんだ意識を引き上げられた。
足を止めて汐を見ると、ローライドガーネットの瞳が不安げに揺れていた。

「凛くん元気ないね…。もしかして具合悪い?あたしの家着いたら寝てていいからね?」
繋いでいない方の手で汐は凛の頬を撫でた。
口数が少なかったのは考え事をしていたからであるが、どうやら汐は本気で凛の具合が悪いと思い込んでいるようだ。

「調子悪いのに会いたいなんてわがまま言ってごめんね…」
「いや、睡眠不足なだけで体調は平気だ。心配させて悪かったな。それに汐の会いたいはわがままじゃねえよ」
睡眠不足ではあるが体調は悪くない。
恋人の言う会いたいなんてわがままではないし、もしそれがわがままであれば大歓迎。もっと沢山言って欲しいくらいだ。
凛は宥めるように汐の頭を撫で、帰るぞ、と声をかけ手を引いて歩き出した。
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