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Destination Beside Precious

第15章 12.Masked Family


◇ ◇ ◇

「おはよう姉さん」
「あ、夏貴。おはよう」
姉の姿を見つけた夏貴は声を掛けた。

汐が夏貴に話していた通り、2日明けてこの日は鮫柄とスピラノの合同練習が行われる。
これまでであれば午前と午後の1日だけであったが、今回は午前のみで今日と明日の2日間の予定だった。

「鮫柄ジャージ似合うね!」
「そうかな?ありがとう」
鮫柄の黒いジャージを身に纏った夏貴は初めて見た。
その表情ははにかみながらもどこか凛としていて、あの小さかった弟がとても強く逞しく成長したと改めて感じると共に誇らしく思った。


榊宮姉弟が話している向こうで、璃保は宗介に声を掛けていた。

「宗介。おはよう」
「ああ、おはよ」
短い挨拶はふたりの信頼関係を表している。

185cmと170cmという長身の男女が話している姿は傍目でも印象的…というよりも迫力があるらしく、ふたりが交際していることを知らない部員達は何事かとチラチラ視線を送っている。

「璃保率いる今年のスピラノは歴代女王らしいな。どれだけやれるか楽しみにしてる」
女子競泳界で代々女王と名高いスピラノであるが、璃保が部長を務める今年は下級生含め特に精鋭揃いだった。

「あら、ありがとう。まだ発展途上よ。まあでも、うちの子たちは誰も女王の通称に恥じない様な子たちだから見てなさい」
肯定とも否定とも解釈できる言葉で返した璃保は不敵に笑ってスピラノの部員の元へ戻っていった。
宗介に自分のチームを褒められたからか、その足取りは力強くも軽やかだった。


定刻になると鮫柄スピラノ両校は集合し、向かい合う形で整列した。
並んだ部員たちの前に立つのは鮫柄の部長である凛、スピラノの部長である璃保と、その隣にマネージャーの汐。

「よろしくお願いします!」
「しゃあっす!!」
両校威勢の良い挨拶がプールの建物内に響き渡る。

「スピラノのマネージャーで3年の榊宮です。本日はよろしくお願いします!」
練習のマネジメントはすべてスピラノのマネージャーが担当する。
その長たる汐が代表して挨拶した。
ちょうど1年前もこうして合同練習に来たことを思い出しながら、汐はぐるりと鮫柄のメンバーを見渡し、最後に凛を見つめた。

鮫柄の部長である凛が今回の合同練習についての説明を終えると、両校の選手達は練習を始めるべく解散した。
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