• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第15章 12.Masked Family


姉がものすごく嬉しそうに戻ってきたから、きっと楽しかったのだろうなどと考えていると、突然腕を掴まれ引っ張られる。

「ちょ、姉さんどうしたの?」
「岩鳶の人たちが夏貴に会いたいって!」
「え!?いや、その、僕は遠慮しとくよ…っ」
そう言いながらも引きずられるようにして連れていかれる夏貴。
あっという間に岩鳶メンバーの前まで来てしまった。

「きみが汐ちゃんの弟くん!?僕は葉月渚!」
一際明るい声。まずは渚が夏貴に声を掛けた。

「僕は竜ヶ崎怜です。…なるほど、お顔だけでなく身体までも美しいのですね」
無論怜はアスリートとしての意味で言ったのだが、ひとつ間違えれば変態ともとれる発言に夏貴は頬を引き攣らせる。

「俺は橘真琴。怜、その発言は危ないよ」
穏やかな声で真琴が怜に釘を刺した。常識人であることと、どことなく姉と似た雰囲気を感じて夏貴はこっそり安堵する。

「榊宮汐の弟で鮫柄1年の榊宮夏貴です。…よろしくお願いします」
ひとつ息をつき、静かな声で名乗った。
岩鳶メンバーはそれぞれ個性溢れる自己紹介であったが、歓迎してくれているらしい。

ひとりまだ名乗っていない人物がいる。
ちらり、と夏貴はその彼を見る。視線がぶつかる。瞳は澄んだ美しい青。
彼は表情を変えずに口を開いた。

「七瀬…遙だ」
「榊宮夏貴です」
「…」
「…」

会話が終了した。こうなることは予想出来ていた。お互い初対面で打ち解ける術を持っていない。
その様子を見て笑いを堪えてる凛に対して、夏貴は忌々しげに視線をやる。


「ねぇねぇみんな!すごいよ、これ!」
「渚、なんのこと?」
真琴が訊ねる。真琴だけでなく全員首を傾げている。

「みんな男の子なのに女の子みたいな名前だよ!」

はるか、まこと、りん、なぎさ、れい、なつき。

すごい!と嬉しそうな渚。目を逸らす遙。痛いところを突かれた表情をする凛と夏貴。困ったような笑顔を浮かべる真琴と呆れたような怜。

「これって運命だよ!これからもよろしくね!なっちゃん!!」
「…!その呼び方はやめてくれませんか…」
「えぇーいいじゃないー!こっちの方が仲良くなれるよ!」
「仕方ないですね…」
渚の勢いに押し切られる形で夏貴は承諾した。

仕方ないと言いつつも、〝仲良くなれる〟という渚の言葉に夏貴が僅かに照れていたのを凛も汐も見逃さず、こっそりふたりで微笑んだ。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp