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Destination Beside Precious

第14章 11.Boys and Girls


しばらくの間、凛は黙ったままだった。
ぎゅ、と汐は目を瞑る。


「〝俺のことが好きでずっと一緒にいたい〟それが汐の答えか?」
「…うん」
ふわりと頭を撫でられる感覚に恐る恐る俯いていた顔を上げると、凛は微かに表情を崩していた。目が合うと、凛は我慢できなかったのか、ぷ、と僅かに笑い声を上げた。

「だから、そのこの世の終わりみたいな表情はやめろ」
「だ…だって…」
仕方ないやつだな、と言いながら困ったような笑顔を浮かべた凛は汐の頬を両手で包み込んだ。

「俺たち、過去に拘るのはやめた」
「俺〝たち〟…?」
「ああ。宗介のやつ、ああ見えてすげぇ璃保に惚れ込んでる。今ある幸せを大事にしねぇとな」
ふたりの間でなにか話したのだろうか。
そうやって言った凛の声はとても穏やかだった。

「それで、その、悪かったな…。一方的にキレて電話切っちまったりして…」
その時のことを思い出した凛は歯切れの悪い言葉で謝罪を口にした。

「それは…全然気にしないで…っ!」
悪いのは完全に自分だと思っていた汐は、凛に謝られて慌てふためく。


「…あぁ、すっきりした…!やっとこれで仲直りだな」
少し幼い口調で呟いた凛は汐から視線を外す。頬と耳がほんのり赤い。どうやら照れているようだ。

仲直り。その言葉に安堵した汐は途端に凛のぬくもりが恋しくなった。
そして無意識のうちに凛に抱きつき、その胸に顔を埋めた。

「…宗介にも夏貴にも情けないって言われて返す言葉も無かったな。特に夏貴は毎日のように〝姉さんと和解したんですか〟って般若みたいな顔で詰め寄ってきて大変だった…」
「それは…その…ほんとにごめん…」


しばらくして凛がおもむろにこんなことを言った。

「それで、汐。ひとつ重要なことを確認したい」
「…?なに?」
とても真剣な声に汐は顔を上げた。
そこには声と同様真剣な顔をした凛。ただならぬ雰囲気を感じる。
ひとつ息をつき、至極真面目に凛はこう訊いた。

「汐、お前昔宗介とキスしたのか?」
「…!?え!?」
まさか訊かれるとは思っておらず、汐の声が動揺で思い切り裏返る。

「だから、キスしたのかって訊いている」
「えっ…と…、それは…」
ずい、と凛の顔が近くなる。目の本気さからして、とても冗談を言っているわけではなさそうだ。
いじわるで訊いてきたという可能性は木っ端微塵に吹き飛んだ。
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