Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
◇ ◇ ◇
宗介と璃保が電話で会う約束を交わしていた頃、凛が汐の家に来ていた。
こうして練習後の疲れた身体でも会いに来てくれるというのに、汐は素直に喜べなかった。
理由はひとつ。
先日のことについてまだ完全に仲直りが出来ていないのだ。
待ち合わせして、電車に乗って汐の家に帰る。
ここまでおおよそ1時間弱。
その間会話もそこそこでぎこちない、別の言い方をすればよそよそしい空気がふたりの間に流れている。
こうして汐の部屋でふたりきりでも、それは変わらなかった。
気まずい。気まず過ぎる。
案外自分は口下手なんだと思い知った。
人見知りなく色んな人と会話することは出来るのに、大切なことはどう伝えていいのか分からない。
宗介の件に関して、今はどう思っているだろうか。
凛はそれについて何も触れてこない。
待ち合わせにやってきた凛の表情は晴れやかとは言えないが曇ってもいなかった。
しかし今、ベッドに背を預け床に座る凛は、一言も喋らず物憂げな表情を浮かべているように見える。
どう思っているのかは分からなくても、なんとも思っていないわけが無い。
この状況に汐は既視感を覚えた。
あの時、凛は汐がありのままを伝えてくれることを望み、それを待っていた。
凛は、一時は激情に駆られることもあるが、その後冷静になりきちんと話に耳を傾けてくれる人だ。
それを汐は知っている。初めから躊躇う理由など無かった。
意を決して、
「ねえ、凛くん、こっち座って?」
こっち、と言いながら左手で自分の隣を叩いた。
言われた通り立ち上がり、汐の左側に座る凛。ベッドがぎし、と撓った。
顔を上げて、揺らぎのないローライドガーネットの瞳で、しっかりと凛の瞳を見つめる。
ありのまま。
「あのね、凛くん。あたしが、好きでずっと一緒にいたいって思ったのは凛くんだけだから…!」
ありのまま。必死になって探しても、これしか出てこなかった。
しかしひとたび話し始めると、意外にもすらすらと言葉を紡ぐことが出来た。
「だいぶ前に話した、寂しさを埋める為だけの恋愛…それには宗介くんも含まれる。…宗介くんは凛くんの親友なのに、本当にひどいことした。凛くんが怒るのも当たり前だと思う…。こんな最低なあたしで、ごめんなさい」
話していくうちに自己嫌悪に苛まれ顔が下がっていく。
全て言い切ると汐は完全に俯いた。