Destination Beside Precious
第3章 1.The Honey Moon
凛が汐にプレゼントしたのはハンドタオル。
ビニール越しでもふわふわな触り心地なのが見て取れる、薄いピンクと白のストライプ柄でいかにも女の子の持ち物です、という代物だ。
まだ凛が汐が付き合う前のこと。
雨の中ふたりで走った時に凛の顔についた雨粒を拭いてくれた汐のハンドタオルがとてもふわふわで女の子らしかったことを凛は覚えていた。
一方、汐が凛にプレゼントしたのはハンカチタオルだった。
チャコールグレーの布地にタグのゴールドがよく映える。
よく見ると右下にワンポイントの赤いサメの刺繍があった。
一目見た時に凛くんだと思ったんだよねー!と汐はにこにこと笑みを浮かべる。
「ありがとな、汐」
「どういたしまして。あたしもありがとね」
顔を見合わせてふたりは笑う。
付き合って1ヶ月、今まで繰り返した日々よりもずっと穏やかで笑顔で溢れている。
「にしても俺たち、打ち合わせしたわけでもねぇのに考えてること同じでなんかすげぇよな」
「ほんと、ふたりともタオル」
凛はもう一度タオルを見た。
ふと、凛はプレゼントがそれだけではないことに気づいた。
手のひらサイズの封筒に入ったもうひとつのプレゼントを取り出し、汐に見せる。
「手紙?読んでいいか?」
「…そういうのは1人でいる時に読んで欲しいんだけどな」
恥ずかしいから、と汐は俯いた。
俯いてはいるが嬉しそうな汐に微笑ましい気分になりながら、タオルと一緒に入っていたミニレターを読み始める。
凛くんへ
9/21。
今日は凛くんとあたしが付き合って1ヶ月の日だね。
毎日練習にトレーニングに、自主トレのランニングや筋トレお疲れさま。
毎日疲れてると思うのにあたしとの時間を作ってくれてすごく嬉しいです。
あたしのこと好きになってくれて、彼女にしてくれてありがとう。
凛くんの彼女になれて毎日がすごく楽しいよ。
迷惑かけちゃうこととか、ケンカとかきっとあると思うけど、これからもよろしくお願いします。
大好きだよ。
汐
「ちょ…凛くん、にやにやしないでよ…!」
手紙を読み終え、その内容に嬉しさを隠しきれてない凛に対して汐はつっかかった。
恥ずかしそうに頬を染める汐が愛しすぎて、凛は思わず抱きしめた。
「やべー俺今すげえ幸せだ…」
「もー凛くんったら、おおげさ」
「うっせ」