Destination Beside Precious
第3章 1.The Honey Moon
◇ ◇ ◇
「よ、汐。部活お疲れさん」
待ち合わせ場所に現れた汐に声をかける。
汐を目にした凛の表情は自然と溶けて柔らかくなる。
声をかけられた汐は凛の元へ駆け寄った。
「あー、凛くん。ありがと!ごめんね、待った?」
「いや」
付き合う前は約束などせずタイミングがあったときだけ会っていたが、付き合うようになってからは待ち合わせをして会うようになった。
2人とも学校が違うから、なるべく会えるときは会おうという話になり、今では週に3,4回のペースで会っている。
理由がないと会わない関係から、理由がなくとも会える関係になったのだ。
「夜、寒くなってきたな」
「だね。…夏服だと朝晩はもう冷えるかな」
上着の袖を伸ばす凛に対して、袖伸ばしたいけど短い。と言いながら汐は笑う。
9月も半ばを過ぎた。
七分丈のシャツに丈の短いジャンパースカートだと肌寒いらしい。
寒いねーと言いながら汐は歩き出した。
「なあ汐、今日は何日だ?」
控えめに切り出した凛。
「21日」
歩き出したのが自分だけなことに気づいた汐は、足を止めて答えた。
「その、今日、俺たちが付き合ってちょうど1ヶ月…だろ?」
恥ずかしそうに紡いだ凛の言葉に汐の表情は輝いた。
口元の緩みを隠せていない汐は、スキップでもしそうな浮つく足取りを抑えつつ凛に寄った。
「覚えててくれたんだ」
「忘れるわけねぇだろ。だから、これ、やる」
そう言って凛は小ぶりな紙袋を差し出す。
凛を見た。次に紙袋を見た。
「えー、プレゼント?嬉しいありがとう!実はあたしもあるんだー!」
満面の笑みで差し出された紙袋を受け取る汐。
そして次に自分の鞄をごそごそとあさり始めた。
「はい、凛くん」
汐はラッピングされた正方形のプレゼントを差し出した。
どうぞ、と上目で自分を見つめる汐に内心どきまきとしながら凛はそれを受け取る。
「中見ていい?」
「ああ。俺もいいか?」
「いいよー!じゃあ一緒に開けようよ」
せーの、の声で凛と汐はお互いのプレゼントを開けた。
開けてふたりは驚いた。
ふたりとも、プレゼントはタオルだったのだ。