Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
「そう考えるとあのふたりって歩く華だな」
とても真面目な顔でそう言うから凛は笑ってしまった。
確かに宗介の言う通り璃保と汐はふたり並んでいるだけで場が華やかになる。
「正直璃保の方が馬があったな。専門も同じだし、競泳に対する考え方も似てる」
「確かに」
大いに頷ける。
璃保も宗介と同じかそれ以上に競泳に対して真摯でドライだった。
考えてみればこのふたりが深い仲になることも納得だ。
「璃保に汐のこと相談してるうちに、あいつの方に情が移っちまってな。だから俺から汐に別れを切り出した」
「そうだったのか」
「あの時の汐の表情は今でも印象的だな」
「どんな顔してたんだ?」
「…妙に腑に落ちた表情だったが、少し悲しそうな顔をしてたな。…でもその悲しそうな表情は〝別れを告げられたから〟じゃなくて〝ごめんなさい〟って感じだったな」
「…」
疑惑が確信になった、と宗介は零す。
その時汐はきっと理解したのだろう。自分が宗介に対して恋愛感情を抱けなかったことを知られたということを。からっぽな恋愛に気づいていたということを。
罪悪感を感じやすい汐。
恋人の肩を持つつもりではないが、その時の汐の心情を思うと少し胸が苦しくなる。
「汐と別れてすぐ璃保に告白したが最初は断られたな。〝アンタ汐と別れてすぐに告白してくるってどういうつもり?そんな気持ちで汐と付き合ってたわけ?〟って言われた。そう言ってきた璃保が迫力ありすぎて、それも今でも忘れられねぇ」
困ったように笑う宗介。
今では笑い話ではあるが、当時は相当キたと懐かしそうに言った。
「璃保のあの迫力ってなんなんだろうな、本当に」
多少のことでは動じない宗介が迫力を感じたくらいだ。
相当威圧感があったのだろう。初めて会った時もそうだが、璃保は汐のことになると途端に戦闘モードのスイッチが入る。
「1回振られたくらいじゃ諦められなくてな、少ししてもう1回告白したらいい返事がもらえた」
「璃保も璃保なりに考えたんだろうな。だってお前、あいつの親友の元彼なんだもんな」
「だろうな。そうは言わなかったが、きっとそうだと思う。…だから、大切にしてやらねぇとな」
宗介の口からそんな言葉を聞くとは思っていなかった。
宗介と璃保の器の大きさを思い知った。
それに比べて自分はどうなんだろう。
宗介に嫉妬して汐に冷たく当たったことを改めて後悔する。