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Destination Beside Precious

第14章 11.Boys and Girls


「汐とは夏貴を通じて知り合った。俺が中3ときに夏貴が中1で水泳部に入ってきたのは知ってるよな」
「ああ」
出会いのきっかけは大方そうだと思っていた。
夏貴は宗介にとてもよく懐いている。
たとえ大好きな姉でも、宗介になら紹介するだろう。

「汐と初めて会ったのは夏貴の家に行ったときだったな。あの時の印象は今でも覚えてる」
「印象?」
「ああ。まぁ、あれだな、今まで会った女の中で1番可愛いって思った」
俗らしい感想。
堅物の宗介からぽんぽんと可愛いという単語を引き出す汐。
自分の恋人ながら男キラーだと凛はこっそり思う。

「お前が1番よく分かってるだろうが、汐、愛想いいだろ?俺もガキだったからコロッといっちまってな」
「…」
「それに、放っておけない雰囲気もあるな」
「それは確かにあるな」
放っておけない雰囲気、ふとした瞬間に見せるあの達観したような表情。
今では影を潜めつつあるが、未だにその表情の真意は分からないままだった。

「だがな、付き合ってはいたが、汐は俺のこと嫌ってはなかったが〝好き〟ではなかったな」
「…!」
汐が言っていた、〝昔の人は好きじゃなかった〟。
あの話が凛の頭の中で駆け巡る。

「そんなツラするってことは、凛、お前汐の過去の恋愛事情を知ってるな」
「…ああ」
宗介は気づいていたのだ。汐にとってはからっぽな恋愛だったということに。
途端に言葉に言い表せない感情がこみ上げる。
しかし宗介は凛の感情とは裏腹に、とても穏やかな表情で続けた。

「悪いな。咎めてるわけじゃねぇんだ。だから汐のこと責めたりすんじゃねぇぞ」
「分かってる」
汐は過去の人全員に謝りたいと言っていた。
その〝過去の人〟の中に入っている宗介。
汐なりに清算した過去の出来事だが、凛は複雑な気持ちだった。

「そこで出会ったのが璃保だ」
宗介の口から璃保の名が出る。
考えてみれば宗介から璃保の話を聞くのは初めてだ。

「汐に親友だって紹介されたんだ。まあ、驚いたな」
「美人だからか?」
話の展開からして次に出てくる言葉はこれしかない。
そう思った凛は先に言った。

「なんだ、凛も璃保のこと美人だって思うのか」
「あれは誰が見ても美人だって言うだろ」
璃保と初めて会った時、凛も驚いた。
堂々とした美しさに冷徹さと貫禄を感じ、気圧されそうになった。
本音を言えば、今でも同い年とは思い難い。
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