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Destination Beside Precious

第14章 11.Boys and Girls


「どうした?凛」
「いや…」
普段と変わらぬ宗介の澄まし顔。
凛の胸の中で黒い炎が揺らめく。

筆舌に尽くし難く惨めだった。
幼馴染で親友である宗介に対して嫉妬している自分が。

「いくら汐と瓜二つだからって夏貴に手を出すのはどうかと思うぞ」
「んなわけあるか!」
凛の胸中など知る由もなく軽口を叩く宗介。
その脚に蹴りを入れる。

不思議と先程までのどす黒い気持ちが和らいだ。
落ち着いて話すのなら、今しかない。そう思い凛は一歩踏み出した。


「なあ宗介、ちょっと話さねぇか?」
「なんだ?」

このタイミングだ。白黒はっきりさせておこう。
どちらにせよこのままではいけない。



場所を変えようと提案して向かったのは宗介の部屋。
転校生は新年度の部屋替えまでは二人部屋をひとりで使うことが多い。
凛もそうであったように宗介も今はひとりで部屋を使っていた。

「で、凛。なんかあったのか?」
「宗介、お前汐の元彼らしいな」
ストレートにぶつける。
一瞬意表をつかれた表情をした宗介。

ふたりの間に流れる沈黙。
やがて、先に口を開いたのは宗介だった。

「…なんだ、知ってたのか。だから驚いたんだ。あの汐と凛が付き合ってるって聞いてな」
宗介はいつも通り、無愛想な様子で話し始めた。

「汐のこと、どう思ってる?」
「汐?今でも普通に可愛いと思うぞ」
「…っ!」
「って、別に元彼の俺じゃなくても男だったら好みかどうかは別として汐のこと可愛いって言うと思うがな」

その言葉で鮫柄部員達のことが浮かんだ。
宗介の言う通り、彼らは口を揃えて〝汐ちゃん可愛い!〟といつも騒ぎ立てている。
確かに、と凛は納得する。


「まさかそのことで汐とギクシャクしてんじゃねぇだろうな?」
「…っ!!」
ずばり正解で言葉に詰まる。

「…図星かよ。ったく、情ねぇな」
呆れた様子で宗介は大きくため息をついた。
そしてふと表情を改めると、口を開いた。

「全部聞かねぇとお前は納得しないだろうな。…わかったよ、全部話してやるよ」
「おう」


過ぎ去りし日々を思い出し、宗介は語り出した。

「確かに俺は3年前に汐と付き合っていたし、あの時は汐のことが好きだった」

汐のことが好きだった。
宗介の素直な気持ちに、言葉に表すことの出来ない苦いものが凛の胸に流れ込む。
それをぐっと押しとどめて凛は次の言葉を待つ。
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