Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
「ねえ、汐」
「んー?」
「...気まずさ、半端なかったわね」
「あー…」
凛と宗介に別れを告げて汐と璃保は駅まで歩いていた。
「まさか、宗くんの親友が凛くんだなんてね」
「そうね。アタシも知らなかったわ」
少しの沈黙の後、璃保は口を開いた。
「汐に謝らなくちゃいけないことがあるわ」
「なに?」
「実はアタシ、前に凛に言っちゃったの。アタシの彼が汐の元彼だって」
「え」
「凛が覚えてるかはわからないけど、ごめんなさいね」
先程の凛の沈黙の意味を理解した。
それに凛は記憶力がいい。まず間違いなく覚えているだろう。
「あー、謝らないで。宗くんと凛くんが親友だってわかった時点で言わなくちゃなって思ってたから」
「アタシの口から聞くのと汐の口から聞くのだとと捉え方も違うわ」
人伝いで耳に入る話はどうしても悪い印象になりやすい。
そのことに責任を感じている璃保は、申し訳なさそうに目を伏せた。
「凛くん、怒ってるかな…」
「宗介は凛の親友でしょう?正直いい気はしないでしょうね…」
「どうしよう…ごめんって謝るのもなにか違うと思うし…」
大きく溜息をつく。
どうしてこうも過去の自分は凛に不快な思いをさせることばかりしてきたのだろう。
今更後悔しても過去を変えることなんて出来ないと分かっていても、つくづく自分が嫌になる。
「でも、汐が今好きで付き合ってるのは凛なんだから、それをそうやって伝えたら?アンタの過去の恋愛事情が無理だったらとっくの昔に別れを切り出されてると思うし。それくらい受け止められない男だったらアタシもアンタに別れるよう進言してるわ。凛のことを信じてあげな」
確かに璃保の言う通りだ。
半年ほど前に過去の恋愛事情からすれ違いが生じた時も、凛はそれを受け入れてくれた。
凛が怒るとするなら、それは汐がはぐらかすという行為をしたとき。
ならばちゃんと話した方がいいと思う。
「ちゃんと話す…あたしが好きなのは凛くんだもん」
「ええ、そうして。なにか困ったことが起きたらいつでも言うのよ?いい?」
「うん。璃保、ありがとう」
思えば自分は凛に隠していることが多すぎる。
そのツケが今になって回ってきたことを汐は痛感する。
見上げた空、雨が降りそう。
灰色の雲に覆われている。それは、汐の心の内をそのまま映したようだった。