Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
長い脚で大股に歩み寄るのは、艶やかな青みの強い黒髪ショートヘアの長身美女。彼女の瞳と同じロイヤルブルーのピアスが耳元できらめいた。
「あー、璃保。ごめんね」
「まったく…しょうがない子ねぇ…」
形だけ謝って愛想笑いを浮かべる汐。
それに対して璃保は呆れたように肩を竦めた。
「悪いわね、凛」
「ああ、いや」
汐の代わりに謝る璃保。さながら保護者。
その瞳が自分ではなく、隣にいる親友に向けられていることに凛は気づいた。
「宗介?アンタなんでこんなとこにいるの?」
紹介したわけでもないのに璃保の口から宗介の名が出てきて凛は驚く。
さっきから、いったい、どういうことなのだろう。
「買い出し」
「そう。少しは慣れた?」
「ああ」
「ちょっと待った。お前ら知り合いなのか?」
さも付き合いの長い友人かのように会話をするふたり。それに混ざる汐。
この3人の関係が全く読めない。
璃保と汐が何か言う前に、宗介が口を開いた。
「知り合いも何も、俺の彼女」
「は!?」
本日3度目の衝撃の事実。
3度目にして最大の衝撃。凛はあいた口が塞がらなかった。
偶然が重なるにも程がありすぎる。
「宗くんの親友って、凛くんのことだったの?」
「そうだ」
先程からどうしても、汐の宗くん呼びがひっかかる。
汐が似鳥のことを愛ちゃん、遙のことをハルくんと呼ぶのは凛がそう呼んでいるから。
それに対して宗介のことを宗くんと呼んでいる人は見たことない。
この胸に突っかかる感じは何なのだろう。
なにか、忘れている気がする。
「そっか。あれから2年かぁ…」
「2年経っても汐は何も変わらねぇな。璃保は…またガタイがよくなったか?」
「アンタ、久しぶりに会ってそれは失礼すぎるんじゃない?」
3人の会話を上の空で聞く凛。胸にひっかかる違和感の正体を必死に探る。
弟の先輩だから仲がいいのか。しかしそれだけならこんなに親しくならないはず。
それにしても驚いた。
親友の恋人は、恋人の親友だなんて。
(親友の…恋人…?)
それが解れるのは、ほんの一瞬。
〝親友の恋人〟
思い出した。
以前、璃保が言っていた。
自分の今の彼氏は、汐の元彼だと。
「凛、さっきから黙り込んでどうしたんだ?」
「いや…」
思考が支配される。言葉が出てこない。
幼馴染であり親友の宗介は、自分が愛してやまない汐の元彼氏。