Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
日付が変わったことを確認した凛は目的地のインターフォンを押した。
『え、待って。こんな時間にお客さん…誰だろ』
「汐、ベランダから外見ろ」
『え?うん…電話繋いだままでいい?』
「ああ」
電話越しに窓が開けられる音がした。
見上げると、恐る恐るベランダから顔を出す可愛いひと。
『凛くん!?』
「こんな時間に悪いな」
『いいけど…え!?なんで!?』
「汐、開けてくれ」
明らかに動揺した声と共に電話は切られた。
想像以上にいい反応で凛は榊宮の表札の前でひとり微笑む。
目的地、それは汐の家だった。
椅子に掛けてあったガウンを羽織って蹴るように自室の扉を開け、階段を駆け下りる。
今の今まで電話していたはずだ。
その凛がどうして家の下にいるのだろう。
突然のことに思考が追いつかない。
会えて嬉しいという感情と、何故という感情が忙しなく頭の中を行き交う。
訳も分からず玄関を開けると、そこには花束を手にした凛の姿。
「やっぱり凛くん…!あたしついに幻覚見たのかと思った…!」
「何言ってんだよ」
可笑しそうに表情を崩すと、凛は手に持っていた花束を汐に渡した。
「1番に会いたかったんだ。…汐、Happy Birthday.おめでとう」
日付が変わって4月22日。汐の、18歳の誕生日。
誕生日おめでとうと言って花束を渡すと、みるみる汐の顔に花束にも負けない笑顔が咲いた。
「…ありがとう!あたし、ほんとに嬉しい…っ!」
真っ赤なバラの花束。凛の愛の証。
「サプライズ成功、だな」
「大成功だよー!本当に驚いた!」
汐に手を引かれて家の中に入る。
あの驚く顔と、この笑顔が見たかったのだ。来てよかった。
階段を上りながら凛は思った。
部屋に入るなり汐は花束を置いて凛に抱きついた。
「本当にありがとう!こんなに幸せな誕生日初めて…!」
全身で喜びを表現する汐に、凛まで嬉しくなる。
優しく抱き締め返し、髪にキスをする。
「お前が喜んでくれて俺も嬉しい」
顔を上げて微笑む汐に、同じように笑顔を浮かべ手に持っていた紙袋を渡す。
「プレゼント、花束だけじゃねぇんだ。これも」
「ありがとう!なんかたくさん貰っちゃった」
「俺も誕生日に汐からいろいろ貰ったからな」
「中見ていい?」
「ああ」
汐は紙袋の中から、ペールブルーのリボンが掛けられた小さな箱を取り出す。