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Destination Beside Precious

第14章 11.Boys and Girls



「あーもしもし汐?」
汐の家で夕飯を共にした翌日、凛はひとり夜道を歩いていた。
片手には少し大きな荷物。空いたもう片方の手には携帯電話。
ひとりで歩くのはつまらないから汐に電話をかけた。

『もしもし凛くん?こんな時間に珍しいね。どうしたの?』
「どうもしねぇよ。声が聴きたかっただけだ。…今どうしてる?」
『今ー?んー、さっきお風呂から出て髪乾かし終わったところだよ』
だから電話タイミングよかった、と電話越しに朗らかな笑い声がして凛はほっと胸をなで下ろす。

街灯の少ない夜道を進んでいく。
4月も下旬。もう夜が冷えることも少なくなった。
大きな通りの角を曲がり、これまた静かな住宅街に入る。
見上げた夜空は綺麗だった。雲一つない快晴。月の光が優しく凛の歩く道を照らす。

「昨日はさんきゅ。相変わらず汐の作る飯は美味いな」
『ほんとー?ありがとう!次はちゃんと食材揃えとくよ!』
昨日の汐の料理を思い出す。
有り合わせの食材で手早く料理を作った汐。きっと将来いい奥さんになるだろうな、なんて想像してしまう。
周囲に聞こえるのは自分の足音と話し声だけ。
目的地まで徒歩5分。もうすぐそこだ。


「汐っていつも何時に寝てる?」
『日によってまちまちだけど遅くとも1時までには絶対寝るかな』
「ならあと1時間ちょいだな」
『えーあと1時間も電話しててくれるの?嬉しいけど凛くんつらくない?いつもだったらそろそろ寝るくらいの時間じゃない?』
汐の言う通り、早寝早起きの規則正しい生活を心がけている凛。
普段であればそろそろ就寝準備をしているくらいの時間だ。

「俺のことは気にするな」
そう言うと凛は足を止めた。
目的地についたのだ。腕時計が示す時刻は23時59分。
思い描いていた到着時間ぴったりだ。


「なぁ汐…」
『ん?』
「…もうすぐ俺たちが出会って1年だな」
『あー、そういえばそうだね。凛くんと初めて会ったのって確か去年のこの時期だったね』
はやいねー、と笑う汐。秒針が6を過ぎた。

「俺、あの時携帯を落としてよかったって思う。じゃなきゃ汐に出会えてなかった」

汐に出会えてよかった。この1年、たくさんの喜怒哀楽に溢れていた。
それ以上に、味わったことの無い幸せに満ちていた。
すべては汐に出会えたからである。

腕時計はちょうど24時を刻む。

日付が、変わった。
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