Destination Beside Precious
第14章 11.Boys and Girls
「凛くん金メダルおめでとう!」
表彰式含む全ての大会の日程が終了した。
いくら大会が終わったとはいえ今日は部活で来ていることを弁えて、手を繋ぐということはしなかった。
凛と汐は会話のみのささやかなふたりの時間を楽しんでいた。
「おー、さんきゅ!ま、ハルと同着だったけどな」
ケリつけんのは県大会までお預けか、と凛は惜しそうに言った。
「でもふたりとも大会新記録とかすごいよー!」
「ここで負けてるようじゃ世界には行けねぇ。けど、自己ベストは更新できたし収穫はあったな」
相変わらず自分に厳しいストイックな凛。
「それに、ハルの冷めたツラを熱くさせてやったのも収穫だな」
「ハルくんも後半の追い上げすごかったよね。さすが、凛くんがライバルだっていうだけあるね」
「まあな」
遙のことを褒めたのに、凛は自分のことのように笑った。
そんな様子に汐は表情を柔らかくすると、ふいに声をかけられた。
「みーこー!」
「やっと見つけたー!」
声がした方へ目を向けると、彩と智予がこちらへ向けて手を振っていた。
「彩と智予が呼んでる」
「お前んとこのバックとブレの選手だったか」
「そうだよ」
汐をスピラノ選手団の元へ送り届けると、凛は鮫柄部員たちの元へ戻ろうと踵を返す。
が、思い切り腕を掴まれて引き戻された。男子に掴まれたのではないかと錯覚してしまうような強い力で。
やはり、女傑という表現は間違っていない。
「そんなに急がなくてもいいでしょ!みーこと写真撮ったげる!」
「お、おう」
彼女らを見渡すと、みな長身で顔が小さく整っている。汐がいつも以上に小柄に見える。
それに全員1番綺麗な色かそれに準ずる色のメダルを持っていて、凛は片眉を上げた。
自分が獲ったメダルを汐にかけてあげると、汐に倣い携帯を彼女らに渡す。
「美男美女カップルー」
「将来はオリンピックのメダルをかけてあげるんだよ!」
写真を撮りながら口々に言うスピラノの選手たち。
その傍らで静かな笑みを浮かべる璃保。
彼女らと一緒なら汐も楽しいだろうと凛は思った。
連写したのだろう。返された携帯の画像フォルダを見ると、想像以上にたくさんの写真が入っていた。
ちらりと周囲を見ると、通りすがる男子が羨望の眼差しを向けていることに気づく。
スピラノ水泳部は強豪で名が通っているがそれと同時に美女軍団で有名なことを思い出した。