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Destination Beside Precious

第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※


「…微妙、だね」
「うるせぇ…」
「おみくじで勝負なんてナンセンスなことするからだよー。そんなに気を落とさないの」
「うるせーあれは真琴のせいだ」
「収まりつかないからって真琴くんのせいにしちゃだめ」
収まりがつかないことがおこると、決まって凛は遙と一緒に真琴のせいにする。
いつも自分と一緒にいるときの凛とはまた違った、子どもらしい姿に汐は思わず笑ってしまう。


おみくじの話をしていると、ふたりは神楽殿にたどり着いた。
拝殿以上に巨大な注連縄…大注連縄が目に飛び込む。
迫力満点の注連縄にふたりは思わず息を呑んだ。

会話もそこそこに注連縄を眺めながら神聖な空気を感じていると、ふいに優雅な楽の音が耳に届いた。
その音の方へ目を向けると、壮麗な着物に身を包んだ男女が大勢の人を引き連れてしずしずと歩いている姿があった。

「結婚式だな」
「うん。…綺麗だね」
日本の伝統衣装である白無垢と紋服を身にまとった若い男女。
その姿が美しくて、幸せそうで、汐は目が離せなかった。
ふたりの新しい門出と吉日を祝うのは、これ以上に優美な音など無いと思ってしまう雅楽の音色。

やがて新郎新婦の姿が見えなくなると、ふたりは息をついた。

「すごく綺麗だったね」
「ああ。…幸せそうだったな」
そう返事をした凛だったが、実際に見ていたのは新郎新婦の姿と汐の姿と半々だった。
食い入るように見つめる汐の姿に、遠い将来の幸せな姿を見た。
和装よりもウェディングドレスの方が似合いそう、なんて考えていたなんて汐には言えず話を合わせる。

「なぁ汐。あっち行ってみようぜ」


そう言って汐の手を引き向かったのは、川沿いにある神苑。

「わあ、桜…!綺麗…!」

自分たちが住んでいるところよりも早く、ソメイヨシノが堂々と咲き誇っている。ほぼ満開だろうか。

「こんなにたくさん咲いてるの、初めて見た…!」

県内でもお花見スポットとして有名な、縁結び神社に咲く桜の花。
今回の旅行で1番凛が汐に見せたかった景色だった。

「綺麗だねー…」
汐の声に、凛も桜の花を見上げた。

本当に美しい。

岩鳶小学校に咲いている桜、公園に咲いている桜、今までたくさんの桜を見てきたが、今目の前で咲いているこの桜が1番綺麗に思えた。

さわさわと揺れる桜を眺める汐は夢見心地だった。

「また来年もこうして一緒に桜、見ような」
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