Destination Beside Precious
第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※
「書けたか?」
「うん」
互いに書き上げた絵馬をもって奉納するために軒下を離れる。
「どこに結ぼう…」
どこもかしこも既に納められた絵馬でいっぱいだった。
結べそうなところといえば、汐の背では届きそうもない高いところ。
「上の方なら結べるんじゃねぇか?」
「えーあたし届かないよ」
「俺が結んでやる」
かせ、と凛は汐から絵馬を受け取る。
「っと、結ぶ前に汐のお願いごとを見ておくかな…。〝凛くんがずっとずっと私の傍にいてくれますように〟…?可愛いこと書くじゃねーか。でもそれ、神様にお願いしなくても俺が叶えてやるよ」
そうやってシニカルに笑って言う凛。しかし、次の瞬間嬉しそうに表情を綻ばせたのを汐は見逃さなかった。
「そういう凛くんは何を書いたの?」
「俺?俺はー…、見せなきゃダメか?」
「あたしの見ておいて自分のは見せないとかずるいからダメ。見せて」
凛の手の中の絵馬を見る。
そこに書いてある内容は、とても凛らしい。いうならばロマンチックでまっすぐだった。
ことばは素直じゃないのに、こういうのはすごく素直で汐は頬を緩める。
「〝汐が運命の相手でありますように〟。ふふっ、凛くんも可愛いこと書くんだね」
「可愛いとか言うな。悪ぃかよ」
「ううん。嬉しい」
凛は、自分との未来を信じて疑っていない。
そのことが嬉しくて、胸がくすぐったくて、あまいあまい空気に包まれているようだった。
「じゃ、結ぶぞ」
「お願いしまーす」
汐には届かない高いところに凛は易々と絵馬を結んだ。
雛人形のお内裏様とお雛様のように仲良く隣り合わせで並んだ凛と汐の絵馬。
春の暖かな陽射しをうけてカラカラと揺れる絵馬は、幸せそうに手を繋ぐふたりのようだった。
縁結びの神、大国主命がふたりを祝福しているように見えた。
絵馬を結んだふたりは神楽殿へ向かおうと歩みを進める。
すぐそばにおみくじが結ばれた木を見つけた。
「おみくじだ」
「だな」
「おみくじって言ったら、凛くん新年の運試しにハルくんと真琴くんとおみくじ勝負したんだよね?」
「うっ…!汐、その話は…」
1月3日。凛の家に泊まった汐を自宅に送り届けた足で、遙たちの元へ向かった。
2回目の初詣。そこで新年の運試しと凛が言い出して3人でおみくじ勝負をしたのだった。
「えっと、結果は…」
「半吉、末吉、末小吉…」