Destination Beside Precious
第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※
また、来年。
〝来年〟という単語が汐の意識を一気に現実へ引き戻した。
ここ1ヶ月、ずっと頭の片隅にあった。
考えないようにしていた。
凛のひとことで、閉じ込めていた思いが一気に頭の中を駆け巡り意識を支配する。
来年、1年後。
高校を卒業した、その後。
ふたりの進路は?大学は?
凛には明確な夢と目標がある。
同じところへ進んでいくとは、到底思えない。
繋いだ手をぎゅっと力を込めると、昨日作ったパワーストーンのブレスレットがぶつかった。
1年後、自分たちは繋いだ手を離さずにいられるの。
1年後はもしかしたら、もしかしたら互いに違う道に進んで…
一緒にいないかもしれない。
「汐…?」
一言も声を発さない汐に凛は声をかけた。
愛しい、大好きな彼に呼ばれて汐は我に返る。
今、どんな顔してるだろう。
「…そうだね。来年も、一緒に桜、見ようね」
切なげに笑ってそう返す。
屈託なく笑う凛の思い描く1年後の未来予想図には汐がいると信じて疑っていない。
別離なんて、微塵も思っていないだろう。
今まで身近に感じてこなかった、高校卒業という人生の分岐点が、すぐそこに迫ってきているようだった。
汐が縁結びの神、大国主命に託した願い。
それは、
〝別々の道に進んだ凛の思い描く未来に自分が必要とされていますように〟。