Destination Beside Precious
第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※
そう不敵に笑って凛はちらりと先ほどの2人組を見やる。
すると彼女達は悔しそうな表情を見せた後、足早にその場を立ち去った。
「あー、すっきりした。…あんなの嫉妬に決まってんだろ。いちいち真に受けるな」
確かに凛の言う通り、この場所に祀られている大国主命は縁結びの神様で夫婦和合のご利益がある。
さらに大国主命は妻である須勢理毘売命とおしどり夫婦として言い伝えられている。
そんな神様がふたりの幸せを引き裂くことがあろうか。第一神様はそんなに心が狭くない。
「そうだね。ありがとう、あたしもすっきりした」
自分の反論を凛が代弁してくれた気分だ。
あの2人組の発言が鼻についたのは汐も同じだったが、汐は争いを好まない性分だからなにも言わなかったのだ。
〝目には目を。歯には歯を〟という言葉があるように嫌味には嫌味で返した凛。
とても褒められたものではないし、性格が悪いと言われてもおかしくない返しだったが、ああ言うことで自分を犠牲にして汐を守ったのだ。
だから凛はあの発言に対しては、少しの後悔もなかった。
しばらく歩いたところで、ふたりの右手に人と兎の石像が現れた。
「因幡の白兎だね」
「因幡?」
「たしか、あたし達が住んでるところの旧地名だったかな?」
汐の言う通り、因幡とはふたりが住んでいる土地の旧名。
砂丘の近くに因幡の白兎の伝説の舞台になった海岸があることで有名だ。
「…うさぎは鮫に襲われて赤むけになっちゃって苦しんでたんだって」
「そういう話なんだな」
「…だめだよ凛くん、うさぎを襲うなんて」
凛の歯をちらりと見た汐は神妙な表情を作って言った。
真面目に取り合うような姿勢を見せたのも束の間、凛はチームメイトにするのと同じように汐の頭にアイアンクローをかました。
無論、汐とチームメイトは違うから指先に込める力はいつもよりもかなり弱くして。
「…仔リスも捕食してやろうか?」
「いた…っ!痛いよ凛くん!からかってごめんなさい!」
「わかればいい」
汐が表情を作ったのと同じように、凛も表情を作ると手を離した。
「もー、頭が握り潰されるかと思ったー」
「お前がからかうのが悪い」
「もうからかわないー」
凛が文句を言う汐の頭をぽんぽんと撫でてやると、汐は上機嫌そうに笑顔になった。
その笑顔が可愛いと思う凛はこっそり頬を緩めながら隣の手水舎に足を運んだ。