Destination Beside Precious
第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※
「起きてたの?」
「今起きた。つか、なんでそんな寂しそうなツラしてんだよ」
わしゃわしゃと頭を撫でられたかと思うと、ぎゅっと抱きしめられる。
「んな寂しそうな顔すんなよ。俺まで寂しくなんだろ…。心配しなくても俺はずっと汐の傍にいるし、なにがあったって俺は汐の味方だ」
力強い腕の中、汐はひとり胸がつまる思いだった。
「…ありがとう」
そうは言ったけれど、嬉しいのか、切ないのか、どっちつかずな思いがこみ上げる。
どうしてこんな気持ちになるのかわからない。
わからないから見たくなくて、蝋燭の火を吹き消すようにそっとその気持ちを押し込んだ。
そして何事も無かったかのように声を発する。
「…凛くんおはよう」
「はよ」
しばらく無言でいると、凛がふいにこう言った。
「昨夜の汐はすごかったな」
「もう、凛くん言わないで…恥ずかしいから…。でもそれ、凛くんにも言えてる」
こんなにたくさんキスマークつけて、と言って汐は控えめに身体を見せた。
首、胸、お腹、腕、身体の至る所に凛がつけた印があった。
痕は凛の独占欲の証であるから汐としても嬉しいのだが、見えるか見えないか瀬戸際のところにつけられた痕もある。
どうやって隠すかをまた考えなくちゃいけないなと汐は思った。
「お互い様じゃねぇか」
これ、と凛は鎖骨あたりを指さす。
そこにはうっすらと残る汐の歯の痕。
「うそ、それはほんとごめん」
無意識ではあるが、よりによって見えるところにつけてしまった。
これでは凛が部活の時に色ボケ部長と言われてしまう。
「ま、明日には消えると思うから気にすんな」
「ほんとに?ならよかったけど…」
「なぁ、風呂入らねぇか?昨夜、汗かいたろ」
「いいよ。けど、なにもしない?」
いたずらな笑みを浮かべる汐。それを茶化すように凛は返す。
「流石に疲れてるだろうからなんもしねぇよ。ただ、お前が誘惑しなければの話だがな」
汐は誘うのが上手いからなー、と笑いながら凛はベッドの外に散らばる浴衣を拾い上げつつ風呂場に向かった。
「もう、凛くんのえっち!」
同じようにベッドから降りた汐は浴衣を拾い、それを羽織って凛の後を追い、筋肉質な広い背中に抱きついた。
「だから!そういうのを言ってんだよ俺は!」
文句を言いながらも満更でもなさそうな凛は汐を横抱きにする。
そしてふたりは風呂場へ消えていった。