• テキストサイズ

Destination Beside Precious

第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※


手早く髪を乾かして凛は汐の元へ行った。
汐は革張りのソファに腰を下ろし窓の外を眺めていた。
部屋の明かりは間接照明だけで仄暗く大窓の外のライトアップされた枝垂れ桜が美しい。


「あ、凛くん前髪おろしてる」
凛が隣に座ったことに気づいた汐は、凛の前髪に触れる。
されるがままに前髪をいじられる凛。
前髪をおろしてる姿はやはり新鮮らしく、乾かしたばかりのまだ温かい髪を指に絡めたりして汐は楽しむ。

「七三分けー!」
「お前の方こそいつも七三分けだろ」
「あたしのは八零分けだよ」
「残りの二はどこいったんだよ。ハゲてんじゃねぇか」
「ハゲだなんて失礼しちゃうなー。あたしはふさふさだよ」
凛の分け目を変えてはしゃぐ汐。凛も負けずに汐を茶化す。


何の前触れもなく、ふと会話が止まり、ふたりの間に僅かな静寂が訪れる。

やがて先に口を開いたのは汐。
凛を見ていた瞳を窓の外にやって、語りかけるように呟いた。

「桜、綺麗だね」
「そうだな」
重たげに花を咲かせる枝垂れ桜。
暖かな光に照らされて胸を張るように堂々と立派に佇んでいた。
部屋から見る夜桜はなんとも見事で美しい。

ふたりはしばらくその美しい佇まいを眺めていた。


徐ろに汐の手を握る凛。
驚いたようにこちらを見つめる、揺れるローライドガーネットに微笑みかけ凛は汐にキスをした。

唇を重ねる直前の瞳の揺れは、期待か。一瞬だけ見えたような気がした赤紫の哀愁は忘れたい。

唇は柔らかく溶け、もう一度を求める。
何度も角度を変え、呼吸のために離されてもその時間さえも惜しいと言わんばかりに追い、また唇を重ねる。
汐もそれに応えて凛の背に手を回す。
ごく自然な流れで絡められた舌が互いの情欲を煽る。

「…ふ…ぅん…」
もっとして、と汐は凛の髪に指を絡める。
手を握っていた凛の手は汐の後頭部と腰を支えるために移され、意とせず力が入る。

「りんくん…」
「ん…?」
「ベッド、いこ…?」
革張りのソファでは狭いと言わんばかりに、落ちそうになっていた太腿を持ち上げる。
汐のお願いに凛は賛成の笑みを浮かべると一旦汐から離れて立ち上がる。
そして同じように立ち上がろうとした汐を軽々と横抱きにして、すぐそばのツインベッドの片割れにそっと下ろしてやった。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp