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Destination Beside Precious

第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※



「やっぱり風呂入ってもそんな変わんねぇな」
洗面台の鏡の前に立つ汐に凛は後ろから声をかけた。
そのまま後ろに立ち、まだ濡れている髪に触れる。

「少し伸びたか?」
「そうだね。前と同じ長さに切ろうか、このまま伸ばそうか悩んでるの。凛くんはボブと長いのと、どっちが好き?」
「俺の好きな髪型にしてくれんのか?」
鏡越しに頷く汐を後ろから抱きしめる。

「浴衣濡れちゃうよ?」
「別に、気にすんな。そうだな…、前と同じ長さも似合ってたからいいと思う。が、セミロングもいいな。似合うだろうし」

前と同じ長さ、少し長めのボブスタイル。凛が汐と出会った時の髪型だから思い入れがあった。
しかし、セミロングも見てみたいという気持ちもある。
ロングよりもセミロングの方が女の子らしいと凛は思う。
そのまま伸ばせば毛先が重めのセミロングになるだろう。
きっと似合うと思う。

「じゃあ次美容院行って切ったらそのまま伸ばそうかな」
「どっちも楽しみだな」
凛は汐の手からドライヤーを取り、コンセントに挿す。
そしてブラシを手に取り再び髪に触れた。

「俺が乾かす」
「凛くんがやってくれるのー?ありがとう!じゃ、お願いします」
スイッチを入れて汐の髪をブローし始める。
人に頭を触られると気持ちがいいというは本当らしく、汐は心地よさそうに目を細めている。

「きもちいいー」
「そのまま寝そうなツラだな」
まだ寝んなよ、という声はドライヤーの風の音にかき消される。

「凛くん脚も腕もツルツルだったね」
「水の抵抗を無くすために剃ってるからな…」
湯船に浸かりながらずっと腕を触ってると思ったらこういうことだったのか。
かわりに凛も、汐のもちもちとした柔らかな肌の感触を楽しんでいたのだがそれは言わないことにしよう。

「綺麗な髪だな」
ドライヤーの電源を切って乾いた汐の髪に触れる。
そしてそのまま指をすべらせて髪にキスをした。

「凛くんありがとう!あたしも乾かしてあげる!」
立ち位置を交代して、汐は凛の後に立つ。
しかし、汐の背ではどう頑張っても届かない。

「届かないー。縮んでー」
「なんで風呂上りに筋トレみたいなことしなくちゃなんねぇんだよ。すぐ行くからあっちで待ってろ」
凛の髪を乾かしたかった汐だが、届かないのでは仕方がない。
しぶしぶ戻る汐を鏡越しに見ながら凛はドライヤーのスイッチを入れた。
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