Destination Beside Precious
第3章 1.The Honey Moon
「…着いたな」
あっという間に最寄り駅に着いてしまった。
徒歩5分とは短いものだ。
「電車の時間ちょうどみたいな感じだね」
ちょっと遅かったら30分くらい待ちぼうけになるとこだったね、と汐はいたずらっぽく笑う。
「楽しい時間ってあっという間だね」
「そうだな」
するりとつないでいた手が離れる。改札を背にして汐と向き合う。
名残惜しげに上目で凛を見つめる汐の頭を軽く撫で、その額にふわりと唇を寄せた。
「さんきゅ、汐。...じゃ、気ぃつけて帰れよ」
「うん、ありがと。凛くんもね」
「ああ。じゃあな」
凛は踵を返し改札を通過した。
ホームへ向かう途中に後ろを振り返ってみた。
振り向いた凛に気づいた汐は笑顔でじゃあね、と手を振ってきた。
そんな汐が可愛くて、手を振り返したあと階段を上りながら思わずにやけてしまった。