Destination Beside Precious
第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※
「やっぱり美味しいね!」
「いつも思うが、よくそんな甘そうなモン食えるな…」
もう何回繰り返したかわからない会話。
オリジナル天然石アクセサリーを作り終えたふたりは甘味処でぜんざいを食べていた。
否、正しくいえばぜんざいを食べているのは汐だけで、凛はホットコーヒーを飲んでいた。
慣れない草履でもしかしたら汐は足が痛いかもしれない、と思った凛はこの甘味処に誘おうとした…のだがその前にぜんざいの文字を見つけた汐が目を輝かせていた。
訊くまでもない、と思った凛は先導してここに入ったのだ。
「凛くんの、おしゃれだね」
スプーンを持った汐は、凛の手首を飾っている先ほど作った天然石のブレスレットをさす。
「ああ。紅玉と柘榴石…ルビーとガーネットの組み合わせはスポーツ選手もよく取り入れているらしい」
「そうなんだ」
「あとこの黒いのはオニキスつって身体を活性化するらしいな」
「凛くんにぴったりだね」
「スポーツのお守りだな。あとこれ」
そう言って凛はルビーとガーネットを指さした。
「これ俺。んで、こっちが汐。ずっと一緒だっていうお守りでもある」
ルビーは凛の瞳の色、ローライドガーネットは汐の瞳の色だと凛は言った。
ルビー単体ではただ勝負を呼ぶ石だが、ガーネットと組み合わせることによってそれを活性化する。
ふたつでひとつ。凛と汐は、ふたりでひとつ。
「…やっぱロマンチスト。ほんとに凛くんらしいや…」
凛の思いを噛み締めて汐は目を伏せる。
いつか凛に言われた、〝汐は俺の勝利の女神〟という言葉を思い出す。
嬉しかった、ただ。お前が必要だと、一緒に進んでいこうと言われている気がして。
目頭が熱くなるのを感じたけれど、零れないようにそれをぎゅっと閉じ込める。
顔を上げて極上の笑みを浮かべた。
「凛くんありがとう。本当に嬉しい」
「おう」
予想外に礼を言われて少し驚いた凛だったが、汐の笑顔にそんなことどうでもよくなる。
「ついてんぞ」
表情を綻ばせて凛は汐の頬についたぜんざいのクリームを指でとった。
そのまま口に運ぼうとする凛の指を取り、代わりに舐めとる。
「…!」
「凛くんまた甘いって文句言うでしょ?だからあたしが食べちゃった」
「お前なあ…」
そう言って凛はコーヒーカップを口元まで運んだ。
凛は照れると毎回そうする。そんな凛が可愛くて汐はまた微笑んだ。